はじめに
昨今の日銀の政策転換をきっかけに、住宅ローン金利の行方に注目が集まっています。FPの現場でも、「住宅ローン金利が上昇すると、将来の生活にどの程度影響しますか?」といった相談が増えています。
実際、教育費や老後資金など、長期の家計設計においては、わずかな金利上昇がじわじわと家計を圧迫する可能性があります。本記事では、「住宅ローン金利が0.25%上昇した場合、家計にどのような影響が出るのか」を具体的なシミュレーションを通じて確認し、今から実行できる備え方を解説します。
住宅ローンを返済中の方だけでなく、これから住宅ローンを組もうとしている方にとっても、今後の判断材料として参考にしていただければと思います。
金利0.25%上昇は「大学初年度の学費」、「旅行10年分の支出」に相当
住宅ローン金利が0.25%上昇した場合、将来の家計にどれほどインパクトがあるのかを具体的に試算します。本記事では以下の条件で、金利が6年目以降に0.75%を維持した場合と1.00%に上昇した場合を比較しました。
・返済期間:35年
・返済方法:変動金利(元利均等返済)
試算結果は以下の通りです。
0.75%を維持:130万円
1.00%に上昇:135万円
→年間5万円の負担増
・20年目までの返済総額
0.75%を維持:2,600万円
1.00%に上昇:2,675万円
→累計75万円の負担増
・35年間の返済総額
0.75%を維持:4,550万円
1.00%に上昇:4,700万円
→累計150万円の負担増
住宅ローン金利が0.25%上昇すると、年間約5万円の負担増となりますが、これが長期間積み重なってくることを意識することが重要です。
お子さまが生まれたばかりのご家庭であれば、約20年後に訪れる教育費のピークを意識する方も多いでしょう。住宅ローン金利が0.25%上昇すると20年目までに75万円の負担増となります。これは2025年時点の国立大学入学金と授業料(約82万円)の大半に相当する金額となり、家計にとって決して無視できない負担です。
35年ローンの完済が近づく頃には老後を意識するタイミングとなります。
観光庁の「旅行・観光消費動向調査 2024年 年間値(確報)」によると、宿泊を伴う国内旅行費用は1人1回あたり約7万円、2人で約14万円です。老後に年一回の旅行を計画した場合、35年間で150万円の負担増は、約10年分の旅行費に相当し、老後の楽しみに影響を及ぼします。
このように0.25%の金利上昇でも、長期的な視点では人生の重要なイベントや老後資金に大きな影響を与えるため、計画的に対策を講じることが大切です。
あなたはどちらに当てはまる? 影響を受けやすい家庭と受けにくい家庭
同じ0.25%の住宅ローン金利上昇でも、家計への影響は家庭によって大きく異なるので、影響が相対的に大きくなりやすい家庭と、小さくなりやすい家庭の特徴をそれぞれ見てみます。
ポイントは「収入に対する借入比率の大きさ」と「将来の支出や資産運用をどこまで織り込んでいるか」です。
・影響が相対的に大きくなりやすい家庭
住宅ローン金利上昇の影響を受けやすいのは、収入に対する借入比率が高く、低い変動金利を前提に「今なら返せる」水準でペアローンなどを活用している家庭です。将来的に住宅ローン金利が上昇すると、教育費や老後資金の計画を見直さざるを得なくなるため、特に小さなお子さまを育てている子育て世帯で不安の声が多いというのがFPの実感です。
・影響が相対的に小さくなりやすい家庭
一方、収入に対する借入額に余裕があり、あらかじめ金利上昇を織り込んだ返済計画を立てている家庭では、影響は相対的に小さくなります。住宅ローン返済と並行して長期的な資産運用を計画的に行い、家計全体で負担増を吸収できる体制を整えていれば、金利上昇時も落ち着いて対応可能です。
影響が大きくなりやすい家庭に当てはまると感じた方でも、適切な対策を講じることで影響を最小限に抑えることが可能です。影響が小さくなりやすい家庭の方も、適切な対策でさらに家計を強化できます。
次章以降では、「これから借りる方」と「すでに返済中の方」に分けて、住宅ローン金利の上昇に対する具体的な備え方を解説します。