はじめに

来期予想に映る、各社のスタンス

新年度の会社予想には、各社の個性がにじみます。意外なのは、勝ち組の三越伊勢丹の新年度(2027年3月期)営業利益予想は815億円(+1.8%)とほぼ横ばい、最終利益は615億円(-19.2%)の減益と、かなり保守的に見積もっている点。前期の純利益に一過性の押し上げ要因があった反動で、最終利益はいったん実力ベースに戻ります。本業の営業利益は増益見通しなので地力は健在ですが、“勝っているときほど手堅く”という構えです。

対照的なのが、出遅れていた高島屋。新年度(2027年2月期)は営業利益575億円(+7.4%)と3社で最も高い増益率を見込み、前期にCB(転換社債)の買入消却に伴う特別損失で赤字だった最終損益も、380億円の黒字へ回復する計画です。インバウンド反動の谷を越え、業績の底打ち・反転を織り込んでいます。J.フロントも営業利益470億円(-4.1%)と小幅減益ながら、最終利益は290億円(+2.5%)と増益に転じる見通し。つまり新年度は、“勝ち組”の伸びが一服する一方で、“出遅れ組”が持ち直す——いまの株価の景色とは逆の構図が描かれているのです。

興味深いのは、この保守的な予想が時間を経ても三越伊勢丹の株価の重しになっていないこと。むしろ市場は、堅調な月次を見て「計画は控えめで、今後上振れる」と読んでいるフシがあります。会社が手堅く構えるほど、達成・上方修正のサプライズ余地が大きくなる――“勝ち組”の株価には、そんな期待も上乗せされているのでしょう。

では、ここからどうするか。

三越伊勢丹は文句なしの優等生ですが、PERは19.6倍と3社でいちばん高く、“勝ち組”であることはすでに株価に織り込み済み。来期は最終減益の計画でもあり、高値づかみには注意したいところです。慌てて飛びつくより、押し目を待つくらいの余裕があってよさそうです。

逆に出遅れの高島屋・J.フロントは、インバウンドが本格的に底打ちすれば、見直し買いが入る余地は十分。「勝ち馬に乗る」なら三越伊勢丹、「出遅れの逆張り」を楽しむなら高島屋・J.フロント…同じデパート株でも、自分がどんな投資をしたいかで答えは変わります。

AI半導体関連株への資金流入が一服しそうな今だからこそ、内需の百貨店株に視線が戻る可能性があります。3社を見比べながら、自分の物差しで選んでみるのも楽しい時間になりそうです。

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