はじめに
株価位置と、これからの注意点
現在の予想PERは約25倍。決して割安ではありませんが、年20%を超える増益が続くことを思えば、成長企業として妥当とも言える水準です。ちなみに、同社の過去3年の平均PERは約30倍なので、それと比べると過熱感はありません。
加えてリクルートは株主還元にも積極的で、2026年3月期は配当と自己株式取得を合わせた総還元性向が143.5%と、稼いだ以上を株主に還元しました。発行済み株式数は(自社株買いの効果で)2022年から実質13.2%減っており、これも1株あたりの価値を高めています。現在進行中の3,500億円の自社株買い(11月末ごろ終了予定)も、株価の下支え役です。
ただし、注意点もあります。稼ぎ頭のIndeedは、米国を中心とした企業の採用意欲に業績が大きく左右されます。米国景気が減速し求人が落ち込めば、成長シナリオは揺らぎかねません。
こうしたリスクを見極めるうえで、注視しておきたいのは米国の雇用統計です。毎月第1金曜日(日本時間夜)に発表され、なかでも非農業部門雇用者数と失業率が注目されます。企業の採用が活発なら雇用者数は増え、Indeedの追い風になる――いわばリクルートの業績を映す先行指標のひとつと考えられます。
直近2026年5月分(6月5日発表)は、雇用者数が前月比17.2万人増と市場予想(約9万人)を大きく上回り、失業率も4.3%で安定。米国の労働市場は今のところ底堅く、Indeedの成長シナリオを支える環境が続いていると言えます。とはいえ、雇用の増加ペースは一部の業種に偏っているとの指摘もあり、楽観は禁物。今後この数字が失速するようなら、リクルート株にとっては黄色信号です。毎月の雇用統計を定点チェックすることで、保有や売買の判断材料になります。
そしてもうひとつ、為替の影響も見逃せません。リクルートは売上の過半を海外で稼ぐため、円高はそのまま海外利益の目減りにつながります。会社は2027年3月期の業績予想を1ドル=154円という前提で組んでいますが、これは前期の平均150.7円よりやや円安寄りの想定。もし想定を超える円高が進めば、計画の下振れ要因になりえます。逆に、足元のように1ドル=160円前後の円安が続けば、業績の追い風になります。
ここ最近の相場は、AI・半導体関連銘柄にばかり資金と視線が集中しています。値動きの大きさは魅力ですが、同じテーマの銘柄ばかりを抱えていると、そのテーマが崩れたとき、ポートフォリオ全体が一気に傾いてしまいます。
その点リクルートは、AIの恩恵を受けながらも、稼ぎの源泉は半導体の需要サイクルではなく、世界の人材・採用市場。同じAIでも、値動きを動かすエンジンがまったく違います。こうした別のテリトリーの優良株を一つ組み入れておくことは、特定のテーマに偏りがちなポートフォリオのリスクを和らげるうえで、有効な一手になります。
上場来高値という節目を前に、リクルートが日本を代表するグローバル成長株としての実力をあらためて示せるか。半導体相場の熱狂の隣で、静かに最高値を更新していくその姿に、注目したいところです。
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