はじめに
2027年1月引落分から、iDeCo(個人型確定拠出年金)の加入者手数料が改定されます。「負担増?」「iDeCoは選ばない方がいい?」と不安になる人もいるかもしれませんが、ルール変更を単なる“改悪”と捉えるのはもったいないことです。同時期に拠出限度額の引き上げも予定されており、制度全体を見ると、必ずしも“改悪”だけではありません。
今回の改定は、自分の老後資金準備のためにiDeCoの最適な使い方ができているか、改めて見直す絶好の機会です。本記事では、今回の手数料改定の内容と、特に影響が大きい人の特徴、そして2026年中に見直しておきたいポイントについて解説します。
掛金の拠出にかかる手数料が増額に
iDeCo(個人型確定拠出年金)は、税制優遇を受けながら老後資金の準備ができる、私的年金制度です。iDeCoの利用においては、掛金の拠出や資産管理のために各種手数料がかかります。今回改定されるのは、掛金の拠出時にかかる、国民年金基金連合会へ支払う加入者手数料です。
現在は掛金拠出1回あたり105円ですが、2027年1月からは120円へ引き上げられ、年間では180円の負担増になります。また、合わせて年単位拠出の場合も、これまでは拠出時1回分の手数料のみでしたが、拠出月数分の手数料がかかる制度に変更されます。手数料増額の背景には、物価上昇や人件費上昇などによる、iDeCoのシステム維持や事務手続きに要するコストの増加があります。
年間180円という金額だけを見ると、大きな負担には感じにくいかもしれません。しかし、掛金額や運用方法によっては影響が小さくないケースが3つあります。
ケース1:掛金額が少ない人
iDeCoの拠出時にかかる手数料には、国民年金基金連合会への手数料105円に加え、事務委託先金融機関への手数料66円がかかるため、最低でも毎月171円、年間では2,052円(2027年1月からは2,232円)のコストがかかります。
iDeCoの最低掛金は月額5,000円ですが、例えば月額5,000円、年間6万円を積み立てる場合、年間手数料2,232円は拠出額の約3.7%に相当します。積立が毎年3.7%のマイナス運用からスタートするようなものであり、資産形成の効果に少なからず影響があります。もちろん、所得控除による節税メリットもあるため、トータルで考慮すべきコストですが、掛金が少ないほど手数料の存在感は大きくなります。
一方で、例えば月額2万円を拠出している人の場合、年間拠出額に占める手数料は約0.9%です。同じ手数料でも影響は限定的であり、所得控除による節税効果も大きくなるため、手数料増額による影響は、さほど気にする必要はないでしょう。
ただし、掛金額が少ないからといって家計に余裕がない時期に無理をして掛金を増やす必要はありません。少額でも積立を継続することには意味があります。昇給や家計改善などにより余裕資金が生まれているようであれば、掛金の増額を検討してもいいでしょう。掛金額は年に1回変更できます。2027年1月の改定を前に、「何年も最低額のまま放置していないか」「適切な拠出額になっているか」、2026年中に見直してみましょう。
ケース2:元本確保型商品だけで運用
「投資は怖いから」と、定期預金や保険などの元本確保型商品を選択している人も注意が必要です。定期預金等の金利は、市場金利の動向等に応じて設定されています※。現在の金利水準では元本確保型商品の利回りは低く、運用益より手数料の方が大きくなるケースが多いです。そこに今回の手数料改定が加わることで、資産形成の効率はさらに低下する可能性があります。
あおぞらDC定期(1年)適用金利 0.45%(2026年7月1日現在)
みずほDC定期預金 (1年)適用金利 0.4%(2026年5月)
iDeCoは原則60歳まで引き出せない制度です。比較的長期の運用期間になることから、資産の一部を投資信託で運用する選択肢も検討する価値があります。
もちろん、リスクを取れば必ず利益が出るわけではありませんが、長期・積立・分散投資を前提としたインデックスファンドなどは、短期的な値動きはあっても、長期的には資産成長が期待できる運用手段の一つです。今回の改定を機に、「なぜその商品を選んでいるのか」を改めて確認してみましょう。