はじめに
2026年の夏も酷暑が予想されるなか、投資の世界で静かに注目を集めているテーマがあります。エアコンの2027年問題です。これは、2027年4月から家庭用エアコンの省エネ基準が大幅に引き上げられ、基準を満たさない安いモデルが製造・販売できなくなるというもの。とりわけ普及帯の14畳用では、最大で35%近い性能向上が求められます。その結果、店頭に並ぶのは中~上位機種が中心となり、価格は全体で3割以上上がるとの見方もあります。
ポイントは、規制の前年である2026年に駆け込み需要が起きやすいことです。そして、その駆け込みはすでに数字に表れ始めています。経済産業省の商業動態統計によると、2026年5月の百貨店・スーパーでは、家庭用電気機械器具の売上が前年同月比で25~30%も増加しました。飲食料品が数%の伸びにとどまるなか、家電だけが突出しています。
小売業全体でも、家電量販店を含む機械器具小売業は前年同月比14.5%増と、自動車に次ぐ高い伸びでした。猛暑による季節家電の動きもありますが、エアコン2027年問題を意識した買い替えが、この伸びを押し上げている一因と考えられます。つまり、特需は予測ではなく、もう始まっていると考えるのが妥当です。
では、この特需で本当に儲かるのはどこなのか。多くの人が思い浮かべる家電量販店やメーカーの、さらに先まで掘り下げてみましょう。
本命はメーカー、でも株価は織り込み済みかも?
特需の一番の受け皿は、もちろんエアコンメーカーです。値上げが通り、単価の高い上位機種へと買い替えが進む局面は、メーカーにとって素直な追い風。なかでも空調専業で世界首位のダイキン工業は、王道の本命といえます。
ただ、すぐそこで「ダイキン株が買いだ!」と判断するのは要注意です。なぜなら、ダイキンの時価総額は約7兆円。誰もが認める優良企業だけに、エアコン特需についてはとっくに株価に織り込まれている可能性が高いのです。実際、株価は年初来高値を更新しているので、短絡的なひらめきで飛びつくと、高値づかみの可能性もあります。そこで、本命は押さえつつ、視線をその先に向けてみます。
狙い目は川上、省エネ化で中身が増える
視点を変えて注目したいのは、エアコンの中身をつくる川上の会社です。省エネ性能を上げるには、熱交換器を大きくし、コンプレッサーやモーターを高効率なものに替え、きめ細かく電気を制御する部品を積む必要があります。つまり、エアコン1台あたりに使われる部品や素材の量そのものが増えるのです。値上げに加えて「中身が増える」、この二段構えが川上の妙味です。
たとえばアルミ。熱交換器の面積が広がり室外機も大型化するため、アルミの使用量が増えます。国内アルミ圧延最大手のUACJ(5741)あたりが連想されます。熱交換器や配管に使われる銅も、同じく増える方向です。そしてモーター。コンプレッサーやファンを動かすモーターは、より高効率で付加価値の高いものへ置き換わります。世界的なモーター大手のニデック(6594)などが担い手です。
ただし大切な注意点を。UACJもニデックも、柱はエアコンだけではありません。UACJは飲料缶の材料やアルミ地金価格に、ニデックは車載やデータセンター向けに業績を大きく左右されます。エアコン特需は追い風の一つであって、会社の業績すべてを動かすわけではないのです。
もうひとつ、省エネ化で連想されるのがパワー半導体です。モーターを制御し電気のムダを減らす、いわば省エネの心臓部で、富士電機(6504)やローム(6963)といった大手がすぐ連想されます。ところが、やはりここにも落とし穴があります。これらの会社の業績を実際に動かしているのは、エアコンではなく電気自動車(EV)や産業機械、AIサーバー向けなのです。実際ロームは、2026年3月期にEV向け投資が裏目に出て、過去最大の最終赤字を計上しました。エアコン特需という連想だけで買うと、まったく別の要因で株価が動いてとばっちりを受けることもあります。