はじめに

長いレンジを、今度こそ上抜けるか

さて、ここからが今回いちばんの注目点です。吉野家の株価は、ここ数年おおむね2,800円から3,500円あたりの範囲を行き来する、いわゆるボックス相場が続いてきました。何度も3,500円近辺の上限にはね返され、そのたびに押し戻されてきた、もどかしい値動きです。

その膠着を破るきっかけになりそうなのが、今回の好決算です。決算翌日の7月9日、株価は前日比5.9%高の3,525円まで急伸し、年初来高値を更新。その後は、やや押し戻され、終値では前日比0.96%高となりましたが、それでも長く上値を抑えてきたレンジ上限に再び到達しています。株価の世界では、長い保ち合いを上放れると、それまでの重しが外れて新しい上昇トレンドが始まりやすいとされます。同時に発表された自社株買い(発行済み株式数(自己株式を除く)の1.31%にあたる85万株、総額25億円を上限)も上昇の後押しとなりそうです。1年前は思惑で上限に迫って届きませんでしたが、今回は実績を伴う点で、上抜けの信頼度は当時より高いと考えられます。

過熱には注意、これからの見極め方

ただし、勢いだけで飛びつくのは禁物です。今回の営業利益2.4倍には、前年の同じ時期がコスト増で落ち込んでいた反動という側面もあり、来期以降も同じペースが続くとは限りません。会社自身も通期の業績予想は据え置いており、決して強気一辺倒ではないのです。加えて吉野家の予想PERは現時点で45倍。外食株のなかでも高めで、成長への期待はすでに株価に相当織り込まれています。期待が大きい分、それを裏切るネガティブニュースが出れば反落も大きくなりやすいことは念頭に置いておきましょう。

見るべきは二つ。ひとつは、この好調が一過性でないか、次の四半期も客数の増加が続くか。ここは毎月公表される既存店売上高の月次データで、誰でも手軽に確認できます。7月からは『ドラゴンクエストウォーク』とのコラボも始まっており、牛丼プラス1品という得意の型が続くか、注目です。もうひとつは、株価がレンジ上限をしっかり超えて定着できるか。上抜けたと思ってすぐ戻る、だましの動きもあるため、焦らず値動きを確かめたいところです。

1年越しで正念場を迎えた吉野家。思惑ではなく実力で高値に挑む今回、長いトンネルを抜け出せるのか。次の月次と値動きに注目したいところです。

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