はじめに

【記事の要点】
・親の施設入居後は銀行窓口へ行くことが困難になるため、入居前の預貯金管理の準備が欠かせない
・銀行の「代理人制度」は金融機関ごとに手続きや必要書類(診断書など)が大きく異なる
・制度の利用にとらわれず、口座の一本化や代理人カードなど家庭に合った管理方法を選ぶことが大切

親の施設入居が決まると、真っ先に気になるのは環境や費用のことです。しかし見落としがちなのが、入居後に預貯金をどう管理するかという問題です。実体験を交えながら、入居前に確認しておきたい銀行まわりの選択肢を整理します。


「施設に入ったら、銀行に行けなくなる」という当たり前の壁

親の施設入居が決まると、家具の準備や施設との契約など、やることが一気に押し寄せてきます。その中で後回しにされやすいのが、「入居後、親の預貯金をどう動かすのか」という問題です。

考えてみれば当たり前のことですが、施設に入ると、本人が自分の足で銀行の窓口に行くことは難しくなります。普通預金の入出金はATMでできても、定期預金の解約や住所変更など、本人による手続きが必要になるものもあります。

また、施設入居をきっかけに、それまで家族が気づかなかった物忘れや判断力の変化が見えてくることもあります。筆者自身、親の施設入居を経験するなかで、判断力が保たれているうちにしか選べない備えがあることを改めて実感しました。「入居前」は実は限られた準備期間だと捉えておく方がよさそうです。

調べて知った制度と、選ばなかった理由

筆者自身、親の施設入居をきっかけに、こうした場合に使える仕組みがないか調べてみました。そこで知ったのが「予約型代理人サービス」です。本人があらかじめ家族などを「代理人」として銀行に届け出ておき、本人による取引が難しくなった際に、代理人が代わりに手続きできるようにする仕組みです。名称や利用条件は金融機関によって異なります。

調べていくと、この制度には共通した成り立ちがあることが分かりました。令和2年8月の金融審議会市場ワーキング・グループの報告書を踏まえ、2021年2月に全国銀行協会が「金融取引の代理等に関する考え方」を会員銀行向けに取りまとめています。この文書はあくまで「参考」という位置づけで、一律の対応を求めるものではありません。そのため、代理人ができる取引や利用条件、手数料などは金融機関によって異なります。

筆者が親のメインバンクのウェブサイトを確認した限りでは、予約型代理人サービスにあたる案内は見当たらず、家族による財産管理に備えるものとして見つかったのは有料のサービスでした。我が家が必要としていたのは日常的な入出金など限られた範囲だったため、やや大掛かりに感じました。

ほかにも、家族に財産管理を任せる「財産管理等委任契約」という選択肢もあります。委任する財産や事務の範囲を契約で取り決め、任意後見契約とセットで結ぶのが一般的とされる、包括的な仕組みです。銀行での一部の手続きだけでなく、財産管理について契約で委任する仕組みのため、管理してほしい範囲が限られている我が家には、こちらも持て余す規模だと感じました。

結局、我が家では日常のお金の流れを整理する方法を選びました。年金と個人年金の振込先を一つの普通預金口座にまとめ、そこから施設利用料が自動的に引き落とされるようにしました。日常の少額の入出金には、銀行で正式に発行してもらった代理人カード(本人のカードとは別に、家族名義で使えるカード)を使っています。本人名義のカードを家族がそのまま使うのではなく、金融機関が用意している代理人カードを利用できる場合もあるため、取引銀行に確認しておくのも一つです。一方、想定外の出費が発生したときは、一時的に立て替える形にしています。

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