はじめに
・65歳からの「年金+定期収入」づくりでは、利率だけでなく「税金」と「将来の公的医療保険」への影響まで比較することが不可欠
・外貨建て保険の定期支払金は「雑所得」として75歳以降の医療保険料や窓口負担に影響する一方、米国債の利子は源泉徴収で完結可能
・ただし制度改正により、確定申告をしない金融所得も将来的に医療保険の判定へ自動反映されるため、「出口(受取時)」を見据えた選択が重要
65歳で仕事を退き、これからは夫婦の年金が家計の中心に。もう少し定期的な収入が欲しいものの、今から値動きのある投資信託を始めることには不安もある──。そんなとき、米国債や外貨建て保険に目が向くことがあります。比較するときに見落としたくないのが、利率だけでなく「受け取るとき」の税金と公的医療保険への影響です。
65歳から「年金+定期収入」をつくる2つの選択肢
退職後の家計では、現役時代の給与に代わって公的年金が定期収入の柱になります。一方、「年金だけでは少し心もとないので、手元資金の一部から毎年決まった収入を得たい」と考える人もいるでしょう。
選択肢の一つが米国債です。米国債は、保有中にあらかじめ定められた利子を受け取り、満期には額面金額が償還されます。ただし、円ベースでは為替変動の影響を受け、途中売却では価格が変動します。
もう一つ考えられるのが、一時払いの外貨建て終身保険のうち、定期的に支払金を受け取れるタイプです。一時払いした保険料を外貨で運用し、所定の利率に応じた定期支払金を受け取ります。こちらも為替変動の影響を受けます。途中で解約すると、市場金利の変動を解約返戻金に反映する「市場価格調整」や解約控除によって、受取額が払込保険料を下回ることがあります。
どちらが適しているかは、利率だけでは判断できません。特に65歳以降は、「いくら受け取れるか」とともに、そのお金が税制上どのような所得になるのかも確認しておきたいところです。
同じ「定期収入」でも、税金のかかり方は同じではない
米国債の利子には原則20.315%の税金が源泉徴収され、確定申告をせずに課税を終えることができます。一方、外貨建て終身保険の定期支払金は扱いが異なります。今回想定する、契約者本人が定期支払金を受け取るタイプでは、「定期支払額-必要経費」が雑所得となります。
必要経費は一時払保険料や定期支払金の受取予定総額などをもとに算出するため、受け取った金額の全額がそのまま所得になるわけではありません。
ここで注意したいのが「20万円」の扱いです。公的年金等の収入が400万円以下で、公的年金等に係る雑所得以外の所得が20万円以下など一定の条件を満たす場合、所得税の確定申告が不要になる制度があります。
ただし、「20万円以下なら非課税」という意味ではなく、所得税の確定申告が不要でも、住民税の申告が必要になる場合があります。詳しくは自治体に確認しましょう。
このように、同じ年金へ上乗せする定期収入でも、税制上の扱いは異なります。
税金だけではない。「所得」は75歳以降の医療保険にも関係する
なぜ所得の違いをここまで確認する必要があるのでしょうか。
一つの理由が、75歳になると原則として加入する後期高齢者医療制度です。後期高齢者医療の保険料は、被保険者が等しく負担する「均等割額」と、所得に応じて負担する「所得割額」などから計算されます。「保険料計算のもととなる所得金額」には、公的年金等所得や給与所得などとともに、「生命保険契約等に基づく年金など」の雑所得も含まれています。一方、米国債の利子は、源泉徴収だけで課税を終えて確定申告をしなければ、現行制度では原則として後期高齢者医療の保険料算定に勘案されません。
したがって、外貨建て保険の定期支払金から雑所得が生じれば、それが保険料の計算に影響することがあります。
さらに、考えておきたいのが、医療機関の窓口での自己負担割合です。所得に応じて1~3割となります。ここで注意したいのは、保険料と自己負担割合とでは、判定に使う所得の物差しが異なる点です。それぞれの基準は以下の通りです。
・保険料:雑所得も含む「保険料計算のもととなる所得金額」をもとに計算
・自己負担割合(2割負担):控除後の「住民税課税所得」と「年金収入+その他の合計所得金額」で判定
2026年度の基準では、現役並み所得者を除き、次の2つを両方満たす場合に2割負担となります。
・住民税課税所得:世帯の被保険者に28万円以上145万円未満の人がいる
・「年金収入+その他の合計所得金額」:被保険者1人なら200万円以上、2人以上なら合計320万円以上
外貨建て保険から雑所得を得たからといって、直ちに自己負担割合が上がるわけではありません。ただ、所得が判定基準をまたげば、負担割合に影響する可能性があります。
65歳の時点では75歳はまだ先に感じるかもしれません。しかし、老後資金を使って長期間にわたり定期収入を得るのであれば、10年後の制度まで視野に入れておく意味があります。