はじめに
8月にちいかわの記事を書いてから2カ月がたちました。『映画ちいかわ 人魚の島のひみつ』は公開75日間(10月7日発表時点)で観客動員数1,178万人、興行収入172億円を突破し、2026年公開作のトップに立っています。海外でも広がっており、韓国では9月30日に公開されて初日から1位、5日間で動員60万人、興行収入約7.4億円を記録しました。台湾や香港でもすでに公開されています。わたしの周りでも「ちいかわ観た?」が合言葉のようになっており、まだまだこれから観に行く人も多そうです。
10月15日に東宝の2027年2月期・中間決算が発表されるので、ちいかわの影響、株価の織り込み度、買いの条件を整理します。
参考記事:映画『ちいかわ』大ヒットの恩恵を受けるのはどこ? 「東宝」と「粧美堂」投資家が注目する2つの関連銘柄
第1四半期決算には、ちいかわの数字は入っていない
第1四半期は3~5月で、映画の公開は7月24日のため、決算短信にちいかわの記載はなく、決算説明資料でも夏の公開作品として名前が出ているだけです。
第1四半期は営業収入887億円(前年同期比4.6%増)、営業利益138.7億円(同28.3%減)でした。映画事業は営業収入、営業利益とも増加しています。減益の主因はIP・アニメ事業で、営業利益は5.2億円(前年同期は63.4億円)。TOHO Globalの会社分割に伴う連結調整によるもので、会社は調整前の従来ベースなら約65億円と説明しています。本業が崩れたわけではなさそうです。
通期予想の上方修正はあり得るか
通期予想は営業収入3,450億円(前期比4.3%減)、営業利益620億円(同8.7%減)で、4月の期初に作られ、第1四半期時点でも変更されていません。会社は個別作品の前提を開示していませんが、上振れ要因として挙げているのは、TOHOシネマズの料金改定、不動産売却、政策保有株式の売却で、ちいかわの大ヒットは含まれていません。逆に、TOHO Global分割の一部影響は下振れ要因とされています。
じつは、東宝は2022年2月期から2026年2月期まで、5期連続で、第2四半期決算のタイミングで通期予想を引き上げています。となれば、今回も可能性は極めて高いといえます。ちなみに会社四季報秋号の予想では、営業収入3,500億円、営業利益640億円に増額されています。
ただし気をつけたい点もあります。ちいかわの興収は公開30日目の8月下旬に100億円を超えており、中間期(~8月)に入るのはこの部分で、残りは第3四半期以降です。しかも前年の中間期は『鬼滅の刃』や『国宝』が重なって営業利益411億円と高く、前年同期比では見栄えしない可能性があります。なお東宝の取り分は出資比率などで変わり、会社は開示していません。
株価はどこまで織り込んでいるか
10月13日の株価は1,553.5円、予想PERは31.6倍です。5月の安値1,191円からは約3割高ですが、映画が大ヒットした7月末の1,522円からは約2%しか上がっていません。信用倍率は6倍台と買い残が多く、期待外れなら重しになりえます。
また、好材料でも上がるとは限りません。映画ヒットの前から、ヒットを織り込んで株価が上がっていたとしたら、5月の安値からの3割高になった現時点で、利益確定売りが出る可能性もあります。