はじめに

米国の中間選挙で民主党が上下両院を制し、トランプ政権の政策運営や株式市場への影響が注目されています。一方、過去の中間選挙後には米国株が上昇してきた経験則があるものの、長期的な市場循環を示す「ベナーサイクル」では2026年を高値圏とする見方もあります。AI関連株の成長期待が続くなか、二つのサイクル論をどう捉えるべきか。企業業績や金利、設備投資の動向から、今後の相場の転換リスクを読み解きます。


米中間選挙後の米国株とベナーサイクル

今週は米国の中間選挙という大きなイベントがありました。今回の中間選挙では民主党が上下両院で勝利し、今後のトランプ政権の政策運営や財政政策、企業活動への影響が注目されています。

一方、株式市場では選挙という短期的な政治イベントだけでなく、景気や企業業績の循環にも目を向ける必要があります。特に、これまで相場を牽引してきたAI関連株では、成長期待に加えて実際の収益力が厳しく問われる局面に入りつつあります。

今後、金融引き締めの影響が企業収益に波及すれば、「逆金融相場」から「逆業績相場」への移行も意識されるでしょう。こうした転換点を考えるうえで、今回は過去の市場サイクルという少し長い時間軸から、現在の相場を捉えてみたいと思います。

米国株式市場では、人工知能(AI)関連企業への期待が株価を押し上げる一方、巨額の設備投資が将来どれだけの利益を生むのかを慎重に見極める動きも強まっています。決算発表後の値動きには、その両面が表れています。

ベナーサイクルの周期と予測上の限界

株式市場には、景気や企業業績だけでは説明しきれない一定の周期性があると考えられています。代表例は米国の大統領選挙サイクルです。もう一つ、長期的な相場の転換点を考えるうえで話題になるのが「ベナーサイクル」です。

ただし、最初に明確にしておきたいのは、ベナーサイクルは将来の株価を科学的に予測できると証明された理論ではないということです。特定の年に暴落が起きると決めつける材料ではなく、相場の上昇が長期化したときに、どのような条件が重なると下落リスクが高まるかを点検するための補助的な視点として使うべきです。

ベナーサイクルは、19世紀にサミュエル・ベナーが提唱した市場循環の考え方です。株式や商品市場における好況と不況を、一定の周期で捉えようとするものです。近年は、ITバブル崩壊やリーマン・ショックなど、歴史的な市場混乱と一部の年が重なったことが注目されています。

ベナー氏は1873年の金融恐慌で財産を失った経験をきっかけに、過去の商品価格や景気変動を研究し、1875年ごろに周期的な価格変動の考え方をまとめました。注目したのは鉄、トウモロコシ、豚などの商品価格です。価格上昇期、下落期、そして大きな混乱が生じる時期には一定の周期があると考えました。

一般に知られるベナーサイクルでは、金融恐慌が16年、18年、20年の間隔で現れ、価格のピークは8年、9年、10年の周期で繰り返されるとされます。また、価格の底については7年、9年、11年の周期が示されています。

ただし、この周期と現代の株式市場をつなぐ確立された因果メカニズムはありません。過去の大きな転換点と一致した年だけを取り上げ、一致しなかった年を除外したり、後から解釈を変えて一致させたりする「選択バイアス」の問題があります。

したがって、流布しているベナーサイクルのチャートで「2023年を底、2026年を高値圏、その後2032年ごろまで調整局面」とする見方があるとしても、それは歴史的な目安の一つです。

2026年が必ず高値になるとも、暴落が起きるとも言えません。

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