はじめに

年齢とともに気になる健康問題。大腸がん、前立腺がん、乳がんなど、特に話題に上がる三大疾病の一つ、がん。そのがんの治療薬が、近年、効果が高いものほど高額になる傾向にあるそうです。このことは国の医療保険制度に大きな影響を与えるとともに、個人に対しても自分や家族の健康と生活を守るために、医療・がん保険や貯蓄などの形でいざというときの備えについても一考する必要がありそうです。


超高額な夢の新薬「オプジーボ」

2014年、小野薬品工業から発売された新薬「オプジーボ(ニボルマブ)」に対して二つの面から注目が集まっています。一つは「夢の新薬」と呼ぶに相応しい治療効果の高さによって、もう一つは「超高額」ともいえる薬価によってです。

「オプジーボ」の治療効果

一般的にがん治療に用いられる薬剤=抗がん剤は、がん細胞を攻撃し死滅させる薬剤です。がんを死滅させる効果が高いものの、がん細胞以外の元気な細胞まで攻撃してしまうため、効果の個人差や副作用の強さが問題視されてきました。

抗がん剤は、特に分裂の活発な細胞に対して影響を与えるため、粘膜や毛根の細胞などにも影響を与え、口内や消化器官などからの粘膜出血や脱毛などの副作用を生じさせてきました。

しかし、オプジーボの治療効果は抗がん剤とは全く異なり、免疫療法と呼ばれるものになります。

本来、身体の中に異常な細胞が発生した場合、体内の免疫細胞がそれを駆逐してくれます。しかし、がん細胞の表面に「PD-L1」と呼ばれる分子が存在し、その分子が免疫細胞の中でも基幹的な役割を果たすT細胞に作用して、がん細胞に対する免疫効果をなくさせてしまうのです。

そして、オプジーボの薬効は、がん細胞のPD-L1がT細胞に影響を与えることを防いでくれます。そのため、体内の免疫細胞によるがん細胞への攻撃機能が失われません。その結果、本人の免疫力によってがんが駆逐されていくのです。

抗がん剤のように細胞を攻撃する薬効ではないので、他の細胞を攻撃してしまうような副作用も生じません。まさに夢の新薬といえるでしょう。

手術による切除が難しい部位にあるがんの治療にも効果が確認されており、オプジーボの開発は2013年に米科学誌サイエンスによってその年の10大科学ニュースにも選出されました。

【参考】がん細胞に壁、免疫力保つ 新薬「オプジーボ」保険適用拡大 副作用少ない「第4の治療法」へ

あまりにも高額なオブジーボの値段

オブジーボはもともと悪性黒色腫という希少がんのみを対象に健康保険の適用を受けて登場しました。しかし、2015年には肺がん患者の治療にも健康保険の適用を受け、利用が広がっています。

そのこと自体は多くのがん患者に希望を与えるニュースなのですが、問題はその値段です。

オプジーボはその値段が非常に高く、平均的な成人男性の場合、1回の投薬にかかる費用は約133万円、2週間に一度投薬すると年間で3500万円以上の費用がかかるのです。

日本には「高額療養費制度」が存在しますので、健康保険適用の治療にこの薬を使う分には患者の自己負担はそこまで大きくはなりません。数万円から10万円強の範囲内です。しかし、その分の費用を健康保険組合が負担することになるため、今後の制度維持に不安が持たれているのです。

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