はじめに

がん治療薬高額化の理由

がんの治療薬の高額化傾向はオプジーボに限りません。その他のがん治療薬も高額化の傾向にあります。

その大きな理由は、新薬を開発するのに必要な時間と費用が高騰していること。そして、より効果の高い薬剤の開発を狙って患者数の少ない希少疾患に対しても薬剤の開発が行われているからです。

今回取り上げたオプシーボは、実際に患者さんに投与できるまで15年以上もの開発を要しました。その分開発費用にも莫大な費用が投入されています。当然、製薬メーカーとしてはその費用を回収しなければなりません。

なお、オプジーボの開発元である小野薬品の売上高に対する研究開発費比率は30%ほどであり、これは国内の製薬メーカーではダントツの数字です。

また、以前はそれほど通目されていなかった希少疾患向けの薬剤の開発が行われていることも、薬価高騰の理由の一つといわれています。当然希少疾患に対してはその疾患専用の薬剤を開発したほうが効果は高まるのですが、対象となる患者数が少ないだけに、どうしても薬剤の単価は上がってしまうのです。

医療制度の変更や個人の備え

このような薬剤開発や薬価高騰の現状を受けて、医療費の急増と制度破綻を回避しようと国もさまざまな試みを行っています。

例えば、2016年度に「特例拡大再算定」という制度が急遽導入されました。これは年間販売額が1000億円を超えるようなヒット新薬に対して、その価格を最大で50%抑えられるという制度です。既に複数の薬剤が対象となっており、30%ほどその薬価を引き下げられました。しかし、製薬業界の反発が大きく、運用に注意が必要な制度と言えます。

また、そのほかに試行導入されたのが「費用対効果評価」という指標です。これはまずQALY(クオリー)という単位を定め、その意味を一年元気で生きられる1QALYとしています。そして、がん患者などが、1QALYを得るのにかかる費用を持って薬剤や治療法の効果検証を行おうという試みです。

既に日本以外の国では導入が進んでいる制度なのですが、1QALYあたりの費用は高くとも患者から求められている薬剤というのもあるため、やはり運用は難しい制度です。

過去のアンケートなどから1QALYあたり500万円〜600万円が目安とされていますが、当然この金額はその人の価値観や資産状況によって大きく変わるでしょう。

この制度の導入が進めば効果と費用の両方が高い薬剤は健康保険の対象から外れることも考えられるため、個人はそうしたことも意識して保険の加入や貯蓄などのファイナンシャルプランニングを考える必要がありそうです。

(この記事は相続tokyoからの転載です)

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