はじめに
読者のみなさんからいただいた家計や保険、ローンなど、お金の悩みにプロのファイナンシャルプランナーが答えるFPの家計相談シリーズ。今回は内藤忍氏がお答えします。
1年後に親の事情で退職し、故郷に戻る予定です。この歳での転職はリスクが大きいため、今のうちに借り入れをしてアパートを複数購入しようと思っています。現在の信用・属性については問題ないと思います。もちろん金融機関との話で、退職することについては触れません。このように現在の属性で借り入れを行って不動産物件を購入し、すぐ転職する際に注意しなければならない点などがあれば教えてください。
また、どのような物件に投資するとよいのか、おすすめがあれば教えてください。今は新築アパート一棟を中心に考えていますが、利回りが低いのが懸念材料です。
(40代前半 既婚・子供1人 男性)
内藤: ご質問ありがとうございます。
想定利回りに惑わされるな
国内不動産の投資対象としては、一戸建てかマンションか、鉄筋コンクリートか木造か、区分所有か一棟買いかといった、さまざまな選択肢があります。
それぞれにメリット・デメリットがありますが、投資初心者が国内不動産への投資を考える場合、まずは区分所有の中古ワンルームマンションへの投資を検討すべきだと思います。
利回りの高さだけに惹かれ、地方の高利回り物件に投資するのは賢明とは言えません。
高い利回りは満室想定時にすぎず、テナントが埋まらなければ利回りは低下するからです。利回りが低くても、空室率が低く安定してテナントが入る物件のほうが、安心して保有することができます。
アパート1棟は効率的でもハイリスク
ご質問者の方がお考えのようなアパート一棟の投資はハイリスクです。
一度にまとめて物件を取得できるという点では効率的ですが、物件が1ヶ所にまとまっている分、集中リスクが高くなります。
また市場に出回っている、中古アパートは木造物件が多く、鉄筋コンクリート(RC)に比べて、価格が安い分将来の物件価値の下落が大きくなる傾向があります。
優良物件の売り情報は、投資実績があり、資金に余裕のある人に集まっており、一般に流通している情報からはよい物件が見つかりにくいのも事実です。
また、投資物件を購入する場合は、新築より中古物件の方が価格が割安です。すでにテナントが入っている物件を購入することもでき、購入した日から家賃を受け取ることができます。
初心者にとって堅実な選択は?
区分所有のワンルームマンションの場合、東京23区内の物件であれば管理料などのコストを除き、年間5%前後の賃貸収入が得られます。
5%として10年経てば、「5%×10年」で50%。物件価格の半分が家賃収入になります。家賃が維持され、満室が続けば10年後に物件価格が半分になっていても、プラスマイナスゼロということになります。
1億円の投資資金を考える場合、1億円のアパート1棟と2,000万円の区分所有のワンルームマンションを5ヶ所に分散させるという投資のどちらがリスクコントロールしやすいかは明らかです。
自身に魅力的な物件の選択能力がある方は前者を選べばよいのですが、これから始める初心者の方にとっては後者が堅実な方法といえるでしょう。
都心の中古ワンルームマンションより利回りの高い物件は全国に存在します。
しかし、空室リスク、物件の集中リスク、建物の陳腐化リスク、管理の手間、売却のしやすさといった総合的な判断から、最終的な投資案件を選ぶようにしてください。