はじめに

夫婦で話し合い、幸せになれるツール

「夫婦間のコミュニケーションのツールにしたい」とフラップの松本章紀・経営企画室長は言います。家事に関しては男性が責められがちですが、きちんと家事の内容を説明していない女性にも責任の一部はあるのではないでしょうか。

電機大手のパナソニックが30~40代の既婚男女2,742人を対象に行った調査によると、共働き男性の7割は「家事を手伝いたい」と思っているそうです。世の男性には、そのための話し合いや妻の助けが必要なのかもしれません。

「きちんと話し合い、納得し、2人が幸せになれるようなアプリを作りたい」。Yietoには、そんな思いが込められています。

「〇〇パック」でマネタイズへ

現在、Yietoは完全無料で提供されています。今後は、季節のイベントやライフイベントに関する「家事パック」を販売することでマネタイズ(収益化)を進めたい、と小沼さんは語ります。

たとえば、現在提供されている「お正月パック」では、鏡餅を飾る時期や七草がゆの日などをプッシュ通知で教えてくれます。小沼さん自身、Yietoのおかげで今年のお正月は忙しくて忘れがちな日本の風習を家族で楽しむことができたそうです。

今後は「幼稚園入園パック」など、初めてだと不安なことの多いライフイベントにも対応した家事パックも提供していく予定です。

さらに、ユーザーの家事負担を削減するような商品・サービスの紹介する事業展開を検討しています。ほかにも、家事代行サービスの事業者と分担マップを共有したり、ありがとうなどのメッセージを送れる機能を追加し、より使いやすいアプリに成長させていく予定です。


「Yieto」を開発したフラップの小沼代表(右)と松本経営企画室長

「ゆくゆくは日本の離婚率を下げたい」。小沼さんは壮大な夢を語ります。

ただでさえ少子化が進んでいる日本では、少しでも離婚率を低下させることが喫緊の課題。家事分担アプリを通してコミュニケーションをしっかりととることで、“すれ違い離婚”を少しでもなくしたい、というのが小沼さんの願いです。

子供向けのサービスも開始予定

今後は家事分担だけでなく、家事の量自体を少なくする取り組みも行っていくそうです。

前出のパナソニックの調査によると、「自分が家事を頑張りすぎている」と自覚している人は共働き女性の53.7%にも上ります。そんな日本人の“やりすぎ家事”で生じる負担を減らすため、ブログやコンサルティングを通じて“家事の棚卸し”を進めていく予定です。

また、子供の頃から家事を学べるようなアプリやサービスも始めたい、と小沼さんは意気込みを語ります。

今の子供たちが大人になる頃には、男性は家庭に、女性は職場に、もっと進出しなければならず、家事分担の重要性は今以上に増していくはず。子供の頃から家事を体験し、習慣化することは、その子にとって貴重な経験になると考えられます。

また、お手伝いにお小遣いという要素をプラスすることは、お金を稼ぐ感覚を身に付けることにもつながります。日本は一般に「お金の教育」が遅れているといわれています。子供との家事分担がお金について学ぶ機会になるかもしれません。

日本ではまだYietoくらいしか存在していない家事分担の支援アプリですが、海外では500万ダウンロードに達しているアプリがあったり、数十億円の資金調達をしているベンチャーもあるといいます。

現在のYietoのユーザー数は約1,100。今年10月までに2万ダウンロードを目標としているそうです。同社の強みは何といっても、家事分担という事柄が自分事である点。日常的に自分たちが問題だと思っていることだからこそ、サービス開発にも熱が入ります。今後、フラップからどのようなサービスが生まれてくるのか、期待は尽きません。

(文:編集部 戸田嬉)

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