はじめに

読者のみなさんからいただいた家計や保険、ローンなど、お金の悩みにプロのファイナンシャルプランナーが答えるFPの家計相談シリーズ。今回は野瀬大樹氏がお答えします。

結婚し、子供が産まれたことをきっかけに資産運用に取り組み始めました。投資歴は5年ほどですが、本格的に始めたのは、ここ3年。投資の目的は子供の教育費と老後資金の確保です。長期投資を前提に、まずはやってみようということで、これまでに日本個別株への投資、インデックス投資信託、海外個別株、海外インデックス投資信託、ETFなどにチャレンジしてみました。


しかし、海外個別株、ETFにチャレンジするなかで、為替手数料や購入にかかる手数料が日本株と比較するとそれなりにかかるので、「ある程度、資産ボリュームが出てから取り入れたほうがよいのでは?」と考えるようになりました。


そのため、しばらくは日本円で購入できる投資信託で、日本と米国を対象にしたインデックス投資に積立しながら資産形成を進めようと考えています。今後、資産がどれくらいになったタイミングで通貨分散を考慮する必要がありますか?


【現在の収入金額と支出】
現在の収入:700万円~850万円(額面)
住宅費:住宅ローン11万円+2万円(修繕積立・管理費)
食費生活費(嫁小遣い含む):10万円
水道光熱費:2万円
通信費:2万円
夫小遣い:5万円
その他(家電、レジャーなど):5万円(月平均)
【今後の収入金額と予測される支出】
今後の収入金額:おそらく上の金額の範囲内で推移していくと想定しています。
今後予測される支出:子供が2人(上が3歳、下が11ヶ月)、来年から上の子が幼稚園に入ります。幼稚園は住んでいる地区に公立がないため私立となりますが、小中高は公立を予定しております。大学のみ私立理系も想定はしています。
【金融資産】
貯金(定期):300万円
日本株式:80万円
外国株式:60万円
投資信託:50万円(日本20%、US60%、中国20%)
【現在の負債(住宅ローン・借金など)】
住宅ローン残債:4,100万円
【保険契約】
生命保険:2万8,000円(年間)、1,500万円保障
※これに加え、死亡時には会社から2,000万円が入る
医療保険:6万2,000円(年間)入院医療費を補充する目的
(30代後半 既婚・子供2人 男性)


野瀬: ご質問ありがとうございます。

せっかく現在の状況を事細かに教えてくださったので、まずは現状分析を行い、その後で通貨分散の可能性について考えましょう。

この先、家計は苦しい状況に

額面収入が700万円から850万円とおうかがいしておりますので、手取り収入は年550万円くらいと考えましょうか。保守的に考えるため、昇給はほとんど期待できないとしておきます。

いただいた内容からは、この収入が世帯収入なのか、それとも質問者の単独収入なのかわかりませんが、とりあえず奥様は専業主婦だと仮定します。

そして85歳ぐらいまでをシミュレーションしてみたのですが、正直、少し苦しい数値になりました。

お子さんは2人とも私立大学に進み、うち1名は理系とシミュレーションしましたが、とくにお子さんが大学生になる時期がかなり苦しい状況になります。

家計が苦しくなる理由を考えたのですが、ひとつはローンの返済、もうひとつは言いにくいのですが、質問者のお小遣いです(笑)。

ローンに関して、今は金利が安いのと住宅ローン控除があるからまだよいのですが、お小遣いはできれば月1万円程度減らして預金や積立投資として積み立てるのがよいかもしれません。

通貨分散はいつから必要?

さて、本題の通貨分散についてですが、原則しばらくは必要ないと思います。

理由はまだ預金残高が心許ないこと、資金の用途である教育資金が必要になるタイミングが近いこと、投資効率が悪いことです。

確かにマイホームも投資対象と考えると、今の資産は円建て資産に偏っているとも言えますが、マイホームの頭金で、まとまったお金が必要だったとはいえ、小さなお子さんが2人いる今の状況で貯金300万円は少ないかなと思います。

しばらくは預金残高の回復を待つのが安全です。今の状態では年100万円程度貯金ができると思いますので、当面は40歳で手取年収の約1.5倍である700万円を目指せばよいかと思います。

そこまで預金が積み上がれば、急な出費があっても、とりあえずはなんとかなります。

ただ、先述のように将来的に資金が少し厳しくなるのは間違いないので、外貨でなくても早めに投資を行い、少しでも資産を増やしたいという矛盾を抱えていることも事実です。

コストの高さを考えると

そこで、先ほどお話したお小遣いを月1万円程度節約し、生まれた余裕によって追加で積立投資を始めてはいかがでしょうか?

金額から考えると現物株ではなく投資信託になると思いますが、“ちりも積もれば”で年間12万円になります。40歳になったころには、ある程度の種銭になってくれると思います。

それでも40歳になった時のマイホーム以外の資産規模は1,000万円を少し超える程度ですので、ドカンと外貨に直接投資することは正直おすすめしないです。

おっしゃる通り必要となるコストが高いため、資産規模に見合わないからです。

特殊な例ですが、私のお客様で海外で直接投資をするため日本からお金を送り、投資自体はプラスマイナスゼロだったのに、再度日本に送金したら元手の8割に減っていたという事例もあります(笑)。

送金手数料、外貨換算の手数料などを考えると、どうしてもある程度の資産規模がほしいですね。

ご質問者の資産規模だと、40歳時点でも投資(株、投信、外貨)に回すのは400万円から600万円程度になると思いますが、この規模で海外直接投資に手を出すのは少し効率が悪いかなと思います。

まずは貯金700万円を目指そう

今後の円安を予想して、どうしても外貨への投資をしたいというのであれば、
「預金:700万円 株式:150万円 投信:150万円 外貨預金:100万円」のイメージまでは、ありかと思います。

そして、予定通り40歳で700万円まで預金を確保できていたら、今後は「収入-生活費」の4から5割程度を投資に回していくとよいでしょう。

そして資産規模が1,500万円あたりを超えたときに、はじめて海外直接投資を始めるとよいと思います。

つまり、今回の結論としては「資産規模から考えると外貨投資、特に海外直接投資は効率が悪い」ということです。

まずは貯金700万円を目指し、その後、家を除いた投資を含む資産総額1,100万円を目標にしましょう。そこから余裕資金の4割を投資に回し、資産規模が1,500万円を超えたあたりから本格的に外貨投資を本格的に始めるとよいでしょう。

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