はじめに
読者のみなさんからいただいた家計や保険、ローンなど、お金の悩みにプロのファイナンシャルプランナー(FP)が答えるFPの家計相談シリーズ。今回はプロのFPとして活躍する花輪陽子氏がお答えします。
40代後半おひとりさまです。将来の不安から貯蓄に励み、現在4000万円弱の金融資産があります。いずれはマンションを購入したいと思っていますが、あと5年ぐらいは賃貸で資産を増やすことに専念したいです。
現在の資産状況は投資信託186万円、毎月21万円の積み立て。外貨預金米ドル100万円、REIT160万円、保険400万円、株700万円ほどを現物で保有しています。570万円の郵便貯金がもうすぐ満期を迎えるので何で運用したらよいか迷っています。アドバイスいただけると幸いです。
(49歳 女性 未婚)
花輪: ご相談ありがとうございます。
高級有料老人ホームに入りたいなど具体的な目標と金額を
老後が不安だからと漫然と貯め続けるのではなく、なぜお金が必要なのか、いくら必要なのか、どうやって準備をするのかという目標をしっかりと立てましょう。
例えば、老後は高級な有料老人ホームに入り悠々自適な生活を送りたいという目標でもよいのです。それにはいくら必要なのかを考えてみましょう。首都圏の高級な有料老人ホームの金額は施設によってまちまちですが、一時金に2000万円前後、月々25万円前後かかる場合が一般的です。
厚労省・総務省の統計によると、介護が必要になる人の割合は70~74歳で5.9%、75~79歳で13.5%、80~84歳で28.4%、85歳以上で58.4%と加齢とともに急速に高まります。
例えば、退職後の収支として年金収入が月12万円だとします。現在の支出から想定すると年金収入の範囲で生活ができそうです。しかし、施設に入るとなると支出が増えます。仮に80歳から100歳まで施設に入るとなる場合、年間300万円程度の支出になるので年金からだと156万円の赤字になることが分かります。20年間で3120万円、一時金と合わせると5120万円必要なことが分かります。
しかし、現在すでに4000万円弱の資産があるのでこのペースでいけばバラ色の老後生活を十分に目指すことは可能です。マンションを購入したいということですが、施設に入ることを想定する場合は賃貸を継続するのも手ですし、売ったり貸したりしやすい物件を購入することもありかもしれません。
ただし、急激に人口が減少する社会に突入をしていきます。郊外のマンションを購入するのはリスクにもなるので十分に注意をしましょう。東京で有名大学付近のワンルームマンションであれば貸しやすいですが、購入価格も高くなります。
バラ色の老後生活という長期目標を、マンション購入という中期的な目標によって遮ることがないように、十分に計画を立てましょう。老後賃貸だと不安という声もありますが、UR賃貸住宅など保証人が要らない物件もありますし、家賃保証会社をつける方法もあります。
運用先が決まらなければ流動性の高い資産へ
資産運用には目標金額、達成期間を作り、資産配分を決めることが大切です。
例えば、毎月21万円を利率2%で16年間積み立てる場合、4591万円になります。利率2%でも大きなお金となり、マンション購入や有料老人ホームに入る資金となりそうです。2%の場合は債券などリスクの低い資産クラスを多めにしても達成可能な利回りとなります。
570万円の郵便貯金がもうすぐ満期を迎えるので何で運用したらよいか迷っているとのことですが、運用先が決まらない場合は個人向け国債やMRFなどに置いておくのも手です。個人向け国債は1年経過後にいつでも換金ができ、MRFは普通預金のようにすぐに引き出せて流動性が高いためです。
投資助言・代理業の登録をしている独立系金融アドバイザー(IFA)に相談をするのも手かもしれません。