はじめに

日経新聞がセブン&アイによるニッセンの完全子会社化を報道!

8月2日、日経新聞の朝刊一面に「セブン&アイ、ニッセンを完全子会社化」の文字が躍っていました。ニッセン株主にとっては待ちに待った吉報です。

セブン&アイは14年にニッセンを連結子会社にした。現在は議決権ベースで50.74%の株式を保有している。完全子会社にするため、ニッセンの株主にセブン&アイの株式を割り当てる株式交換を実施する。交換比率はニッセンの株式1株に対し、セブン&アイ株式0.015株。ニッセンは10月27日付で上場廃止となる。(引用元:日本経済新聞)

株価は即座に反応しストップ高、前日比30円高の126円、一日で実に30%以上も値上がりしました。ただし、ニッセン株をセブン&アイ株と交換する株式交換という手法が使われるという話だったのですが、この時点では、交換比率はまだ分かっていませんでした。

市場では「最近の株価推移にセブンプレミアムを載せると150円程度は堅い」「2014年の買収が400円だったから半分の200円くらいでは」「一流企業のメンツがあるから思いのほか高く買うんじゃないか」などイケイケの声で溢れていました。

この日の取引は結局、500万株以上の大きな買いを残して、ストップ高で終了しました。が、その日の夕刻、ニッセン株主の脳天に氷水をぶっかけるような発表が……。

フタを開けてみれば「64円」、一日で半額になるという地獄

衝撃です。発表された交換比率から計算すると、ニッセンの株価は理論的には64円。前述したチャートを見てもらうとわかりますが、64円というのは上場来安値。つまり、ニッセンの株を持っている人は全員損をするという地獄の展開となりました。

しかも、前日はストップ高の126円で終了していたので、ここで買った人は一日で半額になってしまいます……。

なんでこんな価格になってしまったんでしょうか?

ニッセンの企業価値はいくら?

買収価格を決める場合、いくつかの方法があるようです。代表的なものには、「市場株価平均法」と「DCF法」などがあります。

市場株価平均法

市場株価法は読んで字のごとくのもので、対象企業が株式を上場している場合に、買収以前の例えば3か月平均など、市場株価の平均を計算して求める方法です。この方法なら、ニッセンの価格も100円以上の値がつけられるんですが、今回は、もう一つのDCF法を重視したようです。

http://www.nissen-hd.co.jp/ir/pdf/IR_16_08_02_4.pdf

DCF法

DCF法は、詳しくは避けますが、将来ニッセンが得られるキャッシュをもとに企業価値を算定する方法です。これだとニッセンは万年赤字の状態ですし、現状では黒字化の目途もたっていないので、計画次第では企業価値0円とも算定できてしまうのです。

http://www.bk.mufg.jp/houjin/riseupclub/2015/09/post-201.html

しかも、ニッセンは債務超過に陥ると予想されていて、資産もないとされてしまいます。

なので、この値付けへのセブン側の本音としては、「本当は買い取りたくもないんだけど、64円くらいならまぁいっか」といったところかと思います。64円は直近の株価推移から考えると鬼安く見えるんですが、純粋に考えると64円だしただけでもまだましかと思うしかないですね。悔しいですが。

教訓・買収価格が未発表のとき安易に飛びつくな!

今回のような、現在の株価より安く買収するディスカウントTOBのような事例は、数は少ないですが、これまでにもいくつか起きています。2014年のオリックスによる「アーク」買収や、2011年の住商グループによる「CSK」子会社化などです。

どれも、買収報道→株価急騰→買収価格が半額以下→急落というプロセスを経ています。そして、いずれのケースも買収報道の時点で買収価格がハッキリしていません(まぁだからこそ、買収価格を論理的に算定できたら、儲ける大チャンスにもなるわけですが)。

買収=高く買い取ってもらえると決めてかかると、思わぬ形で買収価格に値引きシールを貼られるかもしれませんのでお気をつけください。


※記事中には個人の見解が入っています。情報に誤りがある場合もありますので、必ずご自身でご確認し、投資判断は自己責任でお願いいたします

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