はじめに
読者のみなさんからいただいた家計や保険、ローンなど、お金の悩みにプロのファイナンシャルプランナー(FP)が答えるFPの家計相談シリーズ。今回はプロのFPとして活躍する横山光昭氏がお答えします。
ライフプラン表をつくってもらったら、今のままだと70歳を過ぎるとすぐ貯蓄が底をついてしまうようだとわかりました。子育てをしながら貯蓄してきた約900万円を65歳の年金支給開始までの生活費にあて、退職金の約2000万円と年金で老後は安定して暮らせると思っていたのに、びっくりしました。
現在の収入は手取りで約46万円、対して支出は約43万円です。二人の子供が独立してから、ボーナスもいつの間にかなくなってしまい、貯蓄はあまり増えていません。年金受給額は、自分は23万円、妻の分で6万円の合計29万円ほどの見込みです。
どのように改善すると、お金に困らない老後生活を送れるでしょうか。
(Gさん 54歳 会社員 男性)
横山: ご相談ありがとうございます。
老後生活にかかる生活費を試算してみる
現在のご夫婦での生活費を見ると、かなり豊かな暮らしをしているように見受けられます。お子さんが巣立ち、節約ややりくりなどに関心が持てなくなるというご夫婦もいらっしゃいます。奥さんの気が抜けてしまったという場合もあります。
Gさんのご夫婦の場合、現状の生活を維持したとすると、1年間の生活費は516万円かかります。60歳から65歳までの生活費を900万円の貯蓄から出そうと考えているとお聞きしましたが2年もたない状況です。この5年間ですでに2580万円の生活費がないと暮らせないのです。
また、年金が29万円もらえるようになってからを考えても、毎月14万円の生活費が不足することになります。1年間で168万円、10年では1680万円です。
このように考えていくと、現状の老後資金では到底老後生活を維持することができなく、破綻していくことが分かります。
老後資金不足の対応策
老後資金不足に気が付いたらどうしたらよいか、ということは、多くの皆さんが知りたいことのようです。ですが、ウルトラCのような裏技はありません。普通の家計改善と同様、支出を見直して生活費を圧縮する、そのうえでできるだけ早期に貯蓄のペースを上げることが、対応策です。
生活費の圧縮ができると今すぐに貯蓄額を増やしていけます。そうして圧縮した生活に慣れることができれば、老後も圧縮したままの生活費で暮らすことができます。上手に圧縮して年金受給額に近い金額で生活できれば、毎月補填する金額が少なく、蓄えた老後資金が長持ちします。
定年後の60~65歳までも、無職で過ごすことを前提にするのではなく、健康や交友関係などを築く目的で仕事をし、収入を得ることを考えてもよいでしょう。フルタイムでなくともかまいません。アルバイト程度でも収入があるとないとでは、老後資金の減り具合が異なります。
老後資金不足は、このように「生活費を少なくする」「貯蓄を増やす」「定年後も収入を得る」という3つを実施すると、老後資金がより長持ちさせることができます。
生活費の圧縮はどうやるのか
収入が多くなり、夫婦で暮らすことが多くなる50代は、全体的に支出が多めのいわゆるメタボ家計になりがちです。
家族で頑張って貯蓄をしていたころのように、その支出が必要なのか、そうではないのか、もしくは「必要」で買うのか、「欲しい」で買うのか、お金を支払う目的をはっきりさせましょう。そうすると、出すところにお金を出し、削るところは削るというメリハリのついた支出ができるようになります。
メリハリのつけ方は、そのご家庭の価値観にもよるとは思いますが、食費を大切にしたいのであれば食費以外を切り詰める、交際費を大切にしたいのなら食費やその他を切り詰めるなど、調節していくのです。そうすることが、自分たちらしい暮らし方を維持しながら生活費を圧縮するということにつながります。
各費目の支出削減策を知りたい人もいるでしょうが、そこは検索するとすぐ出てくるでしょうから、調べて継続できそうなものを試してみてください。そういう方法論よりも、自分の価値感で支出にメリハリをつけることのほうが、充実した生き方にもつながるのでおすすめです。
収入が増えたり、子供が独立し自由に使えるお金が増えたりすることに合わせ、支出が増えてしまうのは人間の心理として自然なことでしょう。ですが今後、公的年金は減るかもしれません。そして私たちの寿命は延びています。さらなる増税が生活を脅かすこともあるかもしれません。ですから、今からできることをしっかりと取り組み、老後に備えていきたいものです。
マネーフォワードと家計再生コンサルタントの横山光昭による、公平で安心できるお金の相談窓口「mirai talk」が新宿にオープン。無料セミナーも毎週実施中。