はじめに

中国語にも存在する「理財」

このように日本社会では限られた場所にしか登場しなくなった理財ですが、実は中国語の理財には大きな存在感があります。なにしろその話題が、日本のマスコミでも登場するほどの存在感なのです。

例えばSankeiBiz(2018年2月28日付け)では「中国 理財商品のリスク抑制に成功」との記事が登場します。ここでいう「理財商品」とは、高利回りの資産運用商品のこと。銀行・証券会社などが債券・貸出債権を小口化して、個人投資家向けに販売する金融商品です。元本割れの可能性があるにもかかわらず、実際には損失補填が横行しており問題視されていました。最近では中国政府による規制強化が進んでおり、それが一定の成果をあげている――というのが冒頭の記事の内容でした。

このほか中国語には「金融理財師」という職業名も存在するそう。これは日本語でいうところのファイナンシャルプランナー(個人向けに資産運用・財産形成の指南を行う専門家)を意味します。ともあれ理財商品も金融理財師も、理財が資産運用を意味することになります。

「理財」を使ってみよう

このように理財は、現代の日本社会では存在感の薄い言葉です。とはいえ、せっかく世間で財務省理財局が話題になったのですから、この機会に言葉の使い方を覚えておくのも一興でしょう。

理財を使った言い回しで定番なのは「理財に長(た)ける」という言い方です。「理財の道に長ける」「理財に明るい」とも言います。これはお金や財産の管理の仕方、もっと言えば、殖(ふ)やし方が上手いことを意味します。

例えば、岡本かの子の小説「生々流転(しょうじょうるてん)」(1939年・昭和14年)には、「理財に長けた盲人なので、橋銭を朝から取り集めて夕方、役場へ納める間の七八時間ほどの間を、急場の金の入用者に融通して利金を取った」との表現が登場しました。

また久生十蘭(ひさお・じゅうらん)の短篇「予言」(1947年・昭和22年)には「洒脱で、理財にも長け、落合にある病院などもうまくやり、理知と世才に事欠くように見えなかったが」という表現も登場しました。いずれも、財産の殖やし方が上手いと述べています。

このほか理財を使った言葉には「理財家(りざいか)」というものもあります。これは、お金や財産の運用に優れた人という意味。林芙美子の短篇「晩菊」(1948年・昭和23年)には「養母のりつは仲々の理財家で、株をやつたり借家を建てたりして」という表現も登場します。

ということで、前編はここまで。次回後編では理財という言葉の「歴史」について紹介します。実はこの言葉が明治から大正にかけての一時期、経済と理財が覇権を争ったことを紹介する予定です。どうぞお楽しみに。

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