はじめに

ポイントは県内移動か県外移動か

どうやら「引っ越しが多い時は景気が良い」という単純な仮説は正しくないようです。

ここまで読まれた方の中には、「これでは、景気との連動性はおろか、株価の予想にも役に立たないし、何のための解説だ!」とお怒りの方もいるでしょう。でも、ちょっと待ってください。ここからが本題です。

データを工夫してみます。住民基本台帳の移動の統計には、都道府県内(以下、県内)移動と都道府県間(以下、県間)移動と、移動者の内訳も公表されています。

そこで、移動者全体における、県内と県間の占める割合の推移を見てみました。移動は県内か県外のどちらかなので、合わせて100%の棒グラフです。

するとどうでしょう。県間移動者の割合と株価は強い関係が見られます。

「県間移動者の全体に占める割合が高まると株価が上昇し、逆に、県間移動者の割合が下がると株価は下がる」という関係です。県間での移動は、県内と比べて遠くへの引っ越しになり、お金がかかります。お金がかかることをするには、所得が高く景気が良い時のほうが望ましいいうことです。

移動者比率の増減は株価に先行

そして、転勤に関していえば、景気が良いと、会社も転居にかかるコストへの意識よりも、戦略的に転勤など異動を増やそうとします。戦略的な人事異動とはどんなことか、もう少し具体的にいうと、次のようです。

適材適所への人材配置をすることで会社の利益向上を目指したり、従業員にとっても別の業務を経験し、視野を広げられるので、人材の育成ができるメリットがあります。転勤にかかるコストは会社が支払うケースが見られる中で、そのコストよりも将来の人材育成を考える余裕があるということは、会社の経営姿勢に余裕が見られるということです。

さらに図表をよく見てみます。面白い点は、1999年のITバブルの時期の前年に県間移動者の割合が減ったことと、近年の底は2010年であったことです。株価の山と底に対して、県間移動者の割合が先行しています。

最初の図のように、単純に移動者を見るだけでなく、このようにちょっと工夫すれば、株価の先行きの予想にも関係するデータになりました。

さて、異動の時節柄ですが、会社員の皆さんなら身近に異動する人の中で、遠方への転勤する人が増えるかもしれません。また、ご近所で近くよりも遠くに引っ越す人が増えたかなと思ったら、今後の景気や株価も期待されます。

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