はじめに

マネー相談の中で、必ず確認する項目のひとつに「ねんきん定期便」があります。相談者である一般の人にとって年金制度は複雑で、ファイナンシャルプランナーが確認したい事項を口頭ベースで聞くのは困難。そこで毎年届く定期便を見せてもらうのが簡単で、確実なのです。

とはいえ、みんなが支払っている年金制度、相談者が「よくわからない」と口をそろえて言うのを、知らぬままほっておいていいことはありません。

今回は、公的年金制度の仕組みを始め、国民年金と厚生年金の違いを説明していきましょう。


公的年金制度の仕組み

大前提として、日本では国民年金法によって「日本国内に住む、すべての20歳以上60歳未満の人は、国民年金保険料を納めなければならない」と、決められています。


「平成28年度 厚生年金保険・国民年金事業の概況」を元に筆者作成

「1階部分」「2階部分」という言葉を、聞いたことはありませんか?

国民年金と厚生年金の仕組みを説明するときに、必ずといっていいほど使うのが、この「階層」での説明です。

国民年金法で定められているのは、上の図の黄色の部分です。日本国内に住むすべての20歳から60歳の人ですから、職種は問われません。全員が国民保険料を支払う「義務」があるのです。

この国民年金が、通称「基礎年金」とよばれる部分です。そして「基礎年金」に加えて、一部の人に2階部分があります。

2階部分は「厚生年金」であり、保険料は会社の給料から天引きされています。自営業者で働いている人に比べ、保険料が高いと感じるのは、「1階部分」だけなのか、「1階、2階部分の両方の保険料を支払っているか」の違いです。

昨年10月までは、民間企業に勤めている人が加入する「厚生年金」と、公務員や私立中学校教員が加入していた「共済年金」とがありましたが、現在はまとめて「厚生年金」となりました。現在、公的年金とよばれるものは、基礎年金である「国民年金」と、「厚生年金」の2種類になります。

保険料は、誰がいくら支払うの?

国民年金では、20歳から60歳の保険料支払い期間中の加入者のことを「被保険者(ひほけんしゃ)」と言います。そして、被保険者は第1号~第3号のいずれかに分けられます。

 第1号被保険者:自営業者など
 第2号被保険者:民間の企業に勤めている人・公務員や私立学校教員など
 第3号被保険者:第2号被保険者の被扶養配偶者

ここで登場する、「第3号被保険者」ですが、よく見てください、「第2号被保険者の……」という条件になっているのがおわかりでしょうか。つまり、自営業者の配偶者ではダメなのです。あくまで民間企業や公務員など、勤めに出ている人の配偶者に限られた枠です。
転職や、特に女性が結婚を期に、被保険者のカテゴリーが変わるのは、上記のような仕組みだからです。

各被保険者の保険料負担と、納付方法を次の図にまとめました。

昨今問題になっている「第3号被保険者の優遇廃止」は、民間企業の専業主婦(主夫)にだけ優遇されている、保険料が無料になっている実態を、ほかの枠の人たちと同じように、保険料負担を求める動きのことです。

1959年の高度経済成長期にできた国民年金法では、優遇制度を盛り込むことで、民間企業への就職促進を促しましたが、現在は、自由な働き方が求められ、少子高齢化がますます進む時代であり、時代遅れの不公平な制度となってしまっています。

そしてマネー相談で最も多いのが、「給料が上がっても、手取りが思ったほど上がらない」という相談。原因の一つが、年金保険料の負担増です。

国民年金は、物価スライドなどの緻密な計算のもと、保険料が固定で決められていますが、厚生年金は被保険者の収入によって、31等級に分けられます。

標準報酬月額(ひょうじゅんほうしゅうげつがく)と呼ばれる、額面の数字により、各等級の保険料の1/2を、被保険者が負担することになります。給料があがっても手取りが増えないのは、その分、納めなければいけない保険料も増えるからです。

忘れてはならないのは、保険料の半分は、勤めている企業が払っているということです。厚生年金保険料の中に、国民年金(基礎年金)保険料も含まれていますので、これは基礎年金をすべて負担している第1号被保険者からみれば、うらやましいものです。

ちなみに、保険料算定の基準となる標準報酬月額は、「直前暦月4月~6月の3ヶ月間の平均」となっているのを、ご存知でしょうか。毎月計算をするのではなく、一定期間の月給を基準に算定されます。

詳しい保険料表は、こちらをご覧ください。

年金はいくらもらえる? 気になる老後資金はお金のプロに無料相談[by MoneyForward]