はじめに
物販主体の旧駅ビルは苦境に
それにしても、なぜ通常のアトレではなく、新業態のプレイアトレを土浦に開業したのでしょうか。
土浦駅の駅ビルは1983年に開業。2009年にはペルチ土浦としてリニューアルし、今年で開業から35年を迎えます。
ただ、売り上げのピークは1991年。その後は周辺にロードサイドのショッピングセンター(SC)が増加し、特につくばエクスプレス(TX)が2005年に開業して以降はTX沿線で大規模SCの開発が進みました。そうした中で、土浦駅前の商業施設は苦境に立たされたのです。
地元住民の利用方法にも変化がみられ、駅ビルの利用者は学生やシニアが中心になりました。こうした客層は客単価が低めで、物販が主体だと売り上げはますます厳しい状況となっていきました。
ただ、駅に隣接しているので、駅ビルを閉鎖するわけにもいきません。物販にこだわらなくていい駅ビルはないか。それがプレイアトレ土浦の発想の原点でした。どうすれば、駅に来てもらえるのか。その答えとしてたどり着いたのが、コトを売ることにチャレンジする、というものでした。
今年で開業から35年を迎えるJR土浦駅の駅ビル
プロジェクトがスタートしたのは2016年3月。通常、駅ビルの再開発には3~4年を費やすので、かなりの猛スピードで進められました。アトレの藤本課長は「過去に恵比寿や川崎のリニューアルも担当してきましたが、こんなに大変だった物件はなかったです」と苦笑します。
急ピッチの計画だったにもかかわらず、無事にリニューアルできたのは、「コト発信」と「地域創生」というコンセプトに共感してくれるテナントが探し出せたからだと、藤本課長は振り返ります。
サイクルスポット、タリーズ、それぞれの担当者も「地元の自転車屋さんと共存しながら、街づくりから一緒に参加していきたい」「りんりんロードの玄関口として、サイクリストと地元住民に愛されるカフェにしたい」と、夢を語ります。
まだまだ続くリニューアル
今後はリニューアル第2弾として、11月に2~3階にバルニバービが運営する大型の飲食店がオープンする予定です。カフェやレストラン、クッキングスタジオを併設し、「1時間早く駅に来たくなる日本一の駅の待合所」を目指すといいます。
自転車を持ち込めるなど、施設内はサイクリストに配慮した作りに
第3弾では、来年5月に地元の人気店を集めたフードマーケットを開設予定。総仕上げの第4弾では、来年秋をメドにサイクリングホテルを開業させます。90室前後で、1泊1万円以下で泊まることのできるカジュアルなホテルになる予定です。
アトレの藤本課長は「『コト発信』というコンセプトに合致する立地があれば、将来的に2号店の出店も視野に入ります」と語ります。ネット通販の成長によって、物販主体の従来モデルが揺らいでいる小売業界。土浦で始まったチャレンジは、今後のアトレのビジネスモデルを左右するものに発展するかもしれません。