はじめに

東京のメーカーやコンビニも商品化

これまで7回を数える料理コンテスト「新なごやめし総選挙」は、「伝統をベースにしながら独自の発想を加えた、新感覚のメニュー」が評価の基準。歴代の「グランプリ」受賞作は名古屋コーチンのつけダレにきしめんを合わせたり、ひつまぶしのウナギをかき揚げにしてみたりといった具合です。

2013年にエントリーした「元祖台湾まぜそば」は台湾ラーメンのミンチを汁なしの麺にからめて食べるメニューで、惜しくもグランプリは逃しましたが、準グランプリに輝いたことで注目度が上昇。東京にも進出して成功を収め、その後「台湾まぜそば」を看板に掲げる店が全国に数百店舗出現するなど、前述のように「新なごやめし=第3世代」の筆頭となっています。

博覧会の事務局となった「名古屋観光コンベンションビューロー」と愛知県、名古屋市などは2015年に「なごやめし普及促進協議会」を設立。なごやめしを国内外にPRするための協力事業者を募り、審査を経て“合格”した事業者には名古屋城をあしらった扇子型のロゴマークの使用を認めています。

その数は初年度23件、2016年度21件、2017年度20件の累計64件。最近では食品大手の「カルビー」が手羽先味のポテトチップスを販売したり、コンビニの「ローソン」が期間限定で「台湾ラーメン風サラダ」を出したりしてロゴマークを使用。協議会事務局長で名古屋観光コンベンションビューロー総務部の徳永智明部長は「東京の大手メーカーやコンビニまでが、なごやめしはビジネスになると乗ってきてくれた。土産物ではなく、日常的な商品として開発されたことも、なごやめしの浸透ぶりを示している」と分析します。

なごやめしのイラストをあしらったグッズをPRするなごやめし普及促進協議会の徳永智明事務局長

インバウンドPRの一方、学校給食で“復活”も

昨年秋にはPR事業者の飲食店を網羅した「なごやめし飲食店マップ」を5カ国語で作成。観光案内所や空港内に置いたところ、中国語(繁体字)版が残り少なくなるなど好評だそうです。なごやめしならぬ「侍めし」を意味する「SAMURAI CUISINE」という英語でもアピール。料理のイラストをあしらったマグカップや手ぬぐい、扇子を名古屋土産として開発するなど、インバウンド向けの取り組みに力を注いでいます。

こうした変化は市民の意識も変えているようです。名古屋市が毎年実施している市民2,000人アンケート(市政世論調査)で「名古屋の良いところ」を聞くと、今までは「地理的に日本各地への移動が便利」「ものづくりの拠点としての技術水準の高さ」などが常に上位で、「名古屋名物と言われている特色ある食べ物(なごやめし)」は6位にとどまっていました。しかし、2016年度に「三英傑ゆかりの地で歴史がある」と同率の5位に、そして2017年度は単独での5位に浮上しました。

一方で、あまりに観光客向けの高級料理化や「ド派手さ」が強調されてしまい、地元では逆に「なごやめし離れ」が起きているという指摘もあります。家庭で日常的に食べるものではなくなり、本来の食文化が受け継がれなくなってしまうというのです。

そこで地元では、名古屋の市章の「八」にちなみ、毎月8日を「なごやめしの日」としたり、学校給食や大学の学食でなごやめしを出すよう勧めたりして、郷土料理としてのなごやめしの見直しが呼び掛けられています。

名古屋市教育委員会によれば、市内の小学校ではこれまでも「味噌煮込みきしめん」や「エビフライ」が10月の「市制施行の日」の特別献立として出されてきました。また、ソフト麺を使った「あんかけスパ風めん」や「どて丼」などが「ふるさと献立」として推奨されています。

そして2018年度からはさらに年3回、こうした給食を出すための予算化が決まりました。まだメニューは正式に決定していないそうですが、これまでの実績を踏まえた「なごやめし給食」が出されるはずです。

それを子どもたちがどう味わい、どう吸収するか。本当のなごやめしの“進化”はそこから始まるのかもしれません。

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