はじめに
読者のみなさんからいただいた家計や保険、ローンなど、お金の悩みにプロのファイナンシャルプランナーが答えるFPの家計相談シリーズ。今回はプロのFPとして活躍する川口幸子氏がお答えします。
シングルマザーで小学1年生の娘がいます。これから先、子供の教育費がかかることは想像できるのですが、「どのくらいの貯蓄が必要なのか」「中学受験と高校受験でいくら用意すればいいのか」「老後資金はどのくらい準備すればいいのか」、まったくわかりません。現在、事務職で働いています。賞与もなく、この先昇給もないため、転職を検討中です。
〈相談者プロフィール〉
・女性、48歳、未婚・子供1人(小1)
・職業:会社員
・居住形態:社宅(家賃の半額が給料から天引き)
・同居家族:子供と2人暮らし
・住んでいる地域:長崎県
・手取り月収:16.5万円 ※毎月の養育費2万円は将来のために積立しています。
・毎月の支出目安:日々いっぱいいっぱいで考えたことがありません
川口: 母子家庭とのこと、日々大変だと思います。収入を上げていくことを考えるのも良いですが、まずは支出をコントロールできているか、制度の利用ができているかなどを確認するところから始めてみましょう。
すぐに使わないお金なら、金利の高い商品に預けるのも手
毎月の生活で手一杯の中でも、毎月2万円を積み立てて強制的に貯めているのは良いことだと思います。ただし、すぐに使うお金でないのであれば、貯金より引き出しにくい先取り貯金のつもりで、期間を決めて金利の高い商品に預けるのも手です。
たとえば、学資保険代わりに終身保険で10年払いにしますと、10年後には100%以上の解約返戻金を好きなタイミングで使用することも可能です。寝かせておければ増えていきます(ドル建ての場合には為替に気を付ける必要もありますが)。
中学受験、高校受験を視野に現在小学1年生とのことですので、高校2年生の時が10年後なので、大学受験等のためにも検討されるのも良いかと思います。10年以内に解約した場合には、元本割れする恐れもありますので、ここは注意してプロに相談しましょう。
教育費は奨学金の活用も視野に
まず子供の養育費についてですが、中学受験をご検討の場合ですと、志望校にもよりますが難関校を希望される場合は300万円ほどかかることを想定しておいた方が良いかと思います。受験の準備は小学校3年生からされているご家庭が多いです。高学年になりますと塾代で年間100万円ほどの出費が予想されます。
中学以降の授業料は、所得に応じて無償の制度もありますので、市町村の補助金制度などをご確認することをおすすめいたします。また公立の中学に進んだ場合、高校受験に備えて塾を併用することが多いのですが、塾代としては年間30万~50万円、またはそれ以上かかると想定しておいた方が良いでしょう。
地域によっては「無料で受験指導します」という、ボランティアで受験勉強を指導してくれる大学生達の組織を利用できるところもあります。色々と調べてみると良いと思います。
そして、下記の奨学金制度の利用も検討のひとつです。
(1)高校生等奨学給付金制度
低所得世帯の授業料以外の教育費をまかなうために、国が給付する奨学金。返済する必要はありません。
【利用条件】
・生活保護受給世帯、非課税世帯
・保護者が申請する自治体内に住所を有している
・生徒が支給対象となっている高校に在学している
【給付額】
・生活保護受給世帯:国公立:年32,300円/私立:年52,600円
・非課税世帯(第1子):国公立:年75,800円/私立:年84,000円
・非課税世帯(第2子):国公立:年129,700円/私立:年138,000円
各都道府県において、制度の詳細は異なりますので、お住いの都道府県にご確認ください。
(2)地方自治体の奨学金
支給が受けられる要件は、“成績優秀だけど経済的な理由で進学が難しい生徒”であることです。
老後資金の算出方法
老後資金につきましては、お仕事を引退なさってから平均余命までの住居費及び健康保険料などの税金を含めた、生活費を積み上げた額の総額がそれにあたります。
これから支給される公的年金、これまで貯められた預貯金などで、老後資金の埋め合わせをしていきます。それらで足りないと思われる金額を、老後に向けて資産形成していくことになります。
足りないと思われる資金の目安ですが、70歳で引退し90歳までの年齢で計算をしますと、月に5万円足りない場合は5万円×12ヵ月×20年で1,200万円、10万円足りない場合は2,400万円になります。
生活費や住居費をご確認いただき、年金定期便などにより年金受給見込み額(あくまで見込みです)を見積り、計算されてみることをおすすめいたします。