はじめに
読者のみなさんからいただいた家計や保険、ローンなど、お金の悩みにプロのファイナンシャルプランナーが答えるFPの家計相談シリーズ。今回は内藤忍氏がお答えします。
年末に跡継ぎだった独身の兄が亡くなり、まとまった現金と不動産を相続しました。現在の年収は550万円で、資産は定期預金500万円と郵便貯金200万円で、借金はありません。そこに、田舎の家土地(800万円ほど)、保険および預金1億円と、突然大金が舞い込んできてどのように管理するべきか悩んでおります。相続税は1,200万円程度で、それを除いても9,000万円は手元に残ります。
現在考えている使い道としては、田舎の家を引き払い、5,000万円近くを使って、近畿の幹線沿いに家を買おうかと思っています。うち半分くらいをローンにして所得減税に利用し、後に減税がなくなったところで残債を払う計画です。定期預金と郵便貯金は、子供の教育資金として積み立てを続けるつもりです。使う予定のない3,000万円を資産運用するなら、リアルアセットにも挑戦したいです。また、家庭向けのソーラー発電も資産となりえるならチャレンジしたいです。
こんな計画を立てていますが、アドバイスいただけるとうれしいです。家など買わず、もっと運用に回すべきでしょうか?
(30代後半 既婚・子供1人 男性)
内藤: お兄様が遺してくれた大切なお金ですから、後から悔いのないよう計画を立てて大切に使いたいですね。
1億円を活用するときの2つのポイント
手元にある、約1億円の資産をこれからどのように活用するかですが、ポイントは次の2つになると思います。
1)自宅を買うべきか否か
2)どんな商品をどのように配分して資産運用をすべきか
1)については、必ずしも持ち家にこだわる必要はありません。
日本国内においてはほとんどの地域で、今後人口減少が進みます。地価に関して上昇はあまり期待できません。東京の中心部を除いては、不動産を保有することにあまりメリットはないと思います。
持ち家にこだわらないのであれば、賃貸の優良な物件を借りて、使わなかった資産をより高いリターンが期待できる不動産投資に回すこともできます。
個人的には、持ち家にこだわるより賃貸にして、その資金を投資に振り向ける方法が合理的だと思います。
運用の前に考えるべき、投資の目標設定
次に資産運用についてですが、自宅をどうするかが決まれば資産運用する金額が固まります。
その全体の中で最初に考えるべきなのは、投資の目標設定です。求めているのが、毎月の安定した収入なのか、将来に向けての長期的な資産の増大なのか、あるいは堅実に資産を守る保守的な資産運用なのか……。目標によって、実現する方法が変わってくるからです。
資産運用の目標がはっきりしたら、それを実現するための具体的な投資方法を考えていきます。外貨資産をどの程度保有するのか、金融資産と実物資産の比率はどのようにしたら良いのか、インカム収入を狙う金利型の資産の比率はどのくらいにするのか……。
目的と手段が一致していることを確認しながら進めていきましょう。
運用成果に直結する重要な作業「資産配分」
具体的に投資対象として考えうる商品は以下などになると思います。
<金融資産>
投資信託、ETF、個人向け国債(10年・変動)、FX(外貨調達用)太陽光発電投資
<実物資産>
国内不動産、海外不動産(先進国、新興国)
実物資産に関しては個別性が強い商品が多いので、それぞれの投資を決めたら、さらにその分野の専門家の人に投資方法について相談するのが賢明です。不動産であれば、それぞれのエリアの信頼できる販売・管理会社といった人たちです。
そして、これらの「部品」をどのように組み合わせていくか、資産配分を検討します。これが運用成果に影響するもっとも重要な作業になります。
資産配分のプランが完成したら、本当に自分がやりたいことときちんと一致しているかをもう一度確認してみましょう。納得できたら、具体的に資産を計画した方法で運用していきます。
ここまで説明したようなプロセスを、1人ですべて進めるのは難しいかもしれません。特に、数千万円単位の資産運用になれば、専門家に相談して納得できるプランを一緒に練り上げていくのが良いでしょう。
金融資産だけではなく、実物資産も上手に組み合わせて、安定した定期収入と将来の資産形成の両面を実現できる計画をしっかり作り上げてから、実際の投資を始めるようにしてください。