はじめに

3月からスタートした連載も、今回で3回目になりました。これまでの2回は、「桜の開花が早いと株価が高い」「遠くに引っ越す人が多いと株価が高い」という、将来の株価の予測にも使える意外なデータを紹介してきました。

今回はちょっと毛色を変えて、AI(人工知能)のお話をしたいと思います。毎日、テレビやインターネットのニュースでは、少なくても1日に1回はAIの話を耳にする方も多いでしょう。AIで私たちの生活が便利になるという話もありますが、その一方で、たくさんの仕事がAIに奪われそうだという気掛かりな話もあります。

専門家でもない限りAIの構造やシステムの詳細がわからないのは仕方ないことです。しかし、私たちの生活に今後どんどん入り込んでくるものなら、AIをどのように使って行ったら良いか、知らなければなりません。

たとえば、私たちは自動車がどのように動いているのか、細かい構造はよくわかりません。しかし、ハンドルを握ってアクセルとブレーキの使い方がわかれば、運転することができます。AIも車と同じで、構造の詳細までを知っておく必要がないのです。

そこで今回は、投資の世界でAIを使った予測との正しい付き合い方のお話をしましょう。


AIの特徴を改めて整理する

実はAIは、これまで2回にわたって連載した「意外なデータと株価」と強い関係があります。そんなことを言うと、皆さんビックリするかもしれませんが、本当のことです。AIの第1の特徴は、皆さんに「気付き」を与えてくれるということです。

AIを使うにあたって、まず大量のデータを読み込ませます。これが「学習」と呼ばれるものです。そこから将来の株価の予測をしていくわけですが、これらの読み込ませるデータに桜の開花や引っ越しなどの情報も入れることができます。そうすると、AIがそれらと株価のつながりを内側で整理してくれて、将来の株価予測に結びつけるのです。

AIの手法にはさまざまなものがありますが、代表的なものが人間の脳の仕組みを単純化して真似た「ニューラルネット」です。脳を真似てはいますが、機械ですので疲れを知りません。人間と違って、勉強にちょっと飽きてしまったということもなく、延々と学習してもらうことができます。

過去の株価暴落時のデータをたくさん集め、その直前の株価の動きを大量に学習させます。そうした過去の学習データと足元の株価の動きが似ているかどうか、判断してもらうことで、今後の暴落の危険性があるかを判断してもらうこともできます。

また、景気や金利、為替相場がどのように動いた時に株価が上昇してきたかを学習させて、足元の環境と照らし合わることで、今後の株価予想をすることもできます。

そして機械ですから、学習スピードが速いことも特徴です。スピードが速いから、たくさんの情報が学習できます。

さらに、人間のようにその時の気分に左右されません。人間だったら予測が外れ続けると自分の予測に自信を無くしたりもしますが、そんなこともありません。それに、少し気分がヘコんでいたりすると、相場の見方も弱気になったりしがちですが、そんなこともありません。常に冷静で客観的です。

AIとの付き合いで見落とせない点

今一度、整理してみると「大量」「迅速」そして「客観的」と、AIには3つの長所があるのです。こんなお話をすると、なんだかAIにかなわない気になってしまう方もいるかもしれません。しかし、AIも長所ばかりではありません。ここからはAIと付き合っていくうえで、しっかり知っておくべき、注意点をお話ししていきましょう。

まず、そもそも学習させるデータは人間が与えているということです。

人間だったら、普段、接しているいろいろなことから情報を得ることができます。そもそも市場は人間が動かしているものですから、相場を予測するには、いろんな人、いろんな投資家を知っておくことが重要でしょう。普段の生活の中でも、人を知って相場の勉強になることもあるでしょう。

しかしAIは違います。過去の株価だけを学習させているAI、過去の経済指標だけを学習させているAIなど、限られた使い方がされたりします。

ですので、AIによる予想といっても、その予想はもともと、どんな情報を学習した結果なのか、を知っておく必要があるのです。過去の株価のみの学習からの予想であれば、過去の株価を使った予想では、こんな予想になるんだなと判断しておく必要があります。

最近は、文字や音声などの情報も学習させられるようになってきました。相場の予想に、文字まで学習させているかもチェック項目です。

そうであれば、数字や文字など、とにかくたくさんの情報を学習させたAIのほうが優れているのだろう、と思う人も多いでしょう。しかし、そうとも言えません。

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