はじめに

4月4日、ニトリホールディングスの株価が一時、1万9,490円を付ける場面がありました。この価格は年初来高値であるだけでなく、上場来最高値でもあります。

3月27日発表の2018年2月期決算の好調ぶりを受けてのことでしょう。ニトリは2018年2月期が創業50周年にあたり、その記念すべき年に31期連続での増収増益も達成しました。

一方、同じ家具の小売りでありながら、対照的な状況に陥っているのが大塚家具。前期比で減収になるのは3期連続、営業赤字は2期連続です。

いったい何が両社の明暗を分けたのでしょうか。財務データをひも解くことで、その根本原因を探ってみます。


営業利益は10年で2.8倍

ニトリの上場は、今から28年6ヵ月前の1989年9月。連続増収増益が始まったのは、上場前の1988年2月期からです。

当時の売上高は103億円、本業の儲けを示す営業利益は5億円弱で、店舗数も16店舗だったそうですが、2018年2月期には売上高が当時の55倍にあたる5,720億円、営業利益は187倍の933億円で、店舗数は33倍の523店になりました。

この10年だけを切り出してみても、売上高は2.3倍、営業利益は2.8倍に成長しています(下図)。

期初予想の売上高5,680億円、営業利益990億円にこそ届きませんでしたが、その前の期の2017年2月期との対比では、売上高は11.5%増、営業利益は8.8%増。かなりの好成績であることは確かです。

3年連続で1割前後の増収を達成しているあたりは圧巻です。直近5年ほどの営業利益率は16%前後で変わっていませんので、営業増益は増収がもたらしたものといえそうです。

増収を牽引しているのは?

ニトリは通販やリフォーム事業、オフィス、商業、医療、宿泊などの各施設に空間提案をする法人事業も手掛けていますが、これらを全部合計しても、売上高はまだ396億円。連結全体の6.9%でしかありません。

本業の店舗売上げが連結全体の90%を占めていて、これが前期比で1割も増えていることが連結全体の売上高を押し上げています。

この伸びに大きく貢献しているのが、関東の店舗です。2018年2月20日時点で店舗数は全部で523。1年前からの純増数は52店舗ですが、内訳は、家具もホームファッションも扱う「ニトリ」ブランドのお店が23、ホームファッション専門の「デコホーム」は11、ニトリとデコホームの中間的な位置づけの「ニトリEXPRESS」が5となっています。

県別では東京に46店舗あり、前期からの純増数は8。以下、埼玉30(純増6)、神奈川26(同3)、千葉23(同2)、茨城13、栃木8、群馬6。関東合計で146店舗あり、これらの店舗の売上高が連結売上高の31%を占めていて、前期比でも14.8%ほどの伸びになっているのです。

大塚家具は2期連続の大赤字

一方、大塚家具の2017年12月期は、売上高が前期比11.2%減の410億円、営業損失は51億円と、2年連続の大赤字に沈んでいます(下図)。

大塚家具といえば、3年前のお家騒動はあまりにも有名ですが、売上高のピークは2003年12月期の731億円、営業利益のピークは2001年12月期の75億円で、業績が下降線をたどり始めたのはここ数年のことではないのです。

創業社長だった大塚勝久氏が、独立して事業を営んでいた娘の久美子氏を呼び戻し、社長に据えたのは2009年3月。2008年12月期は、ピーク時に75億円あった営業利益がついに12億円まで減った期です。

社長就任後、久美子氏は不採算店舗の閉店を実施したため、売上高はさらに減ったものの、2011年12月期には営業損益は黒字に転換します。2014年12月期は再び営業赤字に逆戻りするわけですが、この年は上期に消費増税前の駆け込み特需が入っています。

下期は反動減があって当然だったのですが、久美子氏が社長を解任されたのは、まさにその下期初めの2014年7月。久美子氏は後に、自分を解任したから2014年12月期は営業赤字になった、と主張しています。

お家騒動は娘の勝利に終わり、2015年12月期は営業黒字に復帰しますが、2016年12月期は過去最大の45億円の営業赤字、続く2017年12月期はその営業赤字が拡大してしまいました。前期比で2割もの減収となってしまったことが原因です。

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