はじめに

読者のみなさんからいただいた家計や保険、ローンなど、お金の悩みにプロのファイナンシャルプランナーが答えるFPの家計相談シリーズ。今回は内藤忍氏がお答えします。

投資用のマンションを4件持っており、8,000万円の借り入れがあります。同時に金融資産を2,500万円運用しています。現在、借入金の繰上げ返済をすべきか、金融資産をそのまま運用するか悩んでおります。

マンションの収入は30万円程度で、ローン返済や管理費など33万円程の支払いがあります。完済は最も早いもので70歳、遅いものだと80歳です。

年収は手取りで600万円程度。生活費で500万円というところでしょうか。どのような観点で運用していけばよいでしょうか。
(40代前半 既婚・子供1人 男性)


内藤: 資産運用の見直しをするためには、「現状認識」「目標設定」「行動」というプロセスを踏む必要があります。

フローとストックの両面から現状認識をする

まず現状認識は、フローとストックの両面からの把握で進めていきます。

フローに関しては、仕事で得られる収入と資産運用によって得られる収入を把握します。また、毎月のローンの返済や生活費として支出している費用も計算しておきましょう。

ストックについては、金融資産と不動産が中心になると思いますが、すべての資産を現時点の時価で評価するようにしましょう。

マンションは不動産業者にお願いすれば概算の価格がわかると思います。金融資産は証券会社から定期的に届けられる取引残高報告書を使って調べておきます。

売却や入れ替えの検討も

そのうえで、これからの対策を考えます。

不動産投資に関しては、ローンの返済額に対する賃貸収入が少ないように見えます。満室時でこのような状態ですと、空室になったときにはさらに負担が大きくなる可能性があります。

今後の賃貸需要や価格動向を調べて、一部を売却する、あるいは物件を入れ替えることも検討すべきです。

また、ローンの借り入れに問題がある可能性もあります。

借入金利を調べ、借り換えによって返済負担を下げられないか検討してみましょう。借入が変動金利か固定金利かによっても変わってくるはずです。

変動金利の借り入れの場合、今後の金利上昇リスクも抱えていることになりますから、その際のリスクも考えておきましょう。

リスクを考えて早めに撤退するのも選択肢のひとつ

不動産投資に関しては、国内全体では人口減少によって賃貸の需給は今後も悪化することが予想されます。エリアによって2極化が進む可能性が高いのです。

現時点で既に物件価格が値下がりしていたとしても、今後さらに下落するリスクや家賃が下がるリスクがあるのであれば、早めに撤退するのも選択肢のひとつといえます。

金融資産の運用に関しては詳細がわからないので、なんとも申し上げられませんが、ローンの返済とどちらを優先するかは検討する価値があります。

借入金利よりも高い運用ができれば運用したほうがよいということになりますが、資産運用の利回りは保証されておらず、マイナスになる可能性もあります。

相談者の場合、現状不動産投資と合わせて1億円近い金額を運用していることになりますから、リスクとしてはかなり大きく、リスクの取り過ぎになっている可能性があります。

金融資産の運用の一部を返済に回して、リスクを軽減することを考えてみましょう。

不動産投資の見直し、ローンの見直し、そして資産運用の見直し。

まずは、これらのチェックを行った上で、必要であれば生活費の削減にも踏み込んでいくべきでしょう。

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