はじめに

読者のみなさんからいただいた家計や保険、ローンなど、お金の悩みにプロのファイナンシャルプランナーが答えるFPの家計相談シリーズ。今回は花輪陽子氏がお答えします。

先立って使わない30万円をロボアドバイザーに預けましたが、最近元本割れが続いています。長い目で見て、そのままにしておくべきか、引き出すべきか悩んでいます。 引き出したら、つみたてNISAの口座開設をしたので、そちらの資金にしようかと思っています。アドバイスよろしくお願いします。

〈相談者プロフィール〉
・女性、40歳、既婚、子供2人
・職業:専業主婦
・居住形態:持ち家(マンション)
・住んでいる地域:東京都
・手取りの世帯月収:55万円
・毎月の支出目安:45万円


花輪: 資産運用をしていると、短期的に元本が割れることはよくあるものです。

リスクを取りたくないお金は国債や定期に

特に株式など元本の値動きが激しい投資対象に投資をしている場合はなおさらです。元本の変動を好まないのであれば、債券の割合を高める、為替リスクを避けるなどの工夫ができるはずです。

使用しているロボアドバイザーのリスク許容度を途中で変更することも可能です。

ただし、マーケット環境の変化に応じて頻繁にリスク許容度を変え、資産配分比率を変更すると、パフォーマンスが低下するリスクもあります。よく考えて、長期的な視点で資産配分を決めるようにしましょう。

マーケット環境によって元本割れが生じるという現象は、ロボアドバイザーを継続しても、つみたてNISA口座に変えたとしても起きる問題です。

リスクを取りたくないお金ならば、個人向け国債や定期預金などにするのが賢明でしょう。

NISAなどの非課税口座は積極的に使って

2018年1月に「つみたてNISA」という新たな少額投資非課税制度が始まりました。2014年1月にスタートした「一般NISA」や、2017年1月にスタートした「個人型確定拠出年金(iDeCo)」など、非課税の優遇制度が充実しているので利用価値はあります。

初心者は手数料を支払ってロボアドバイザーのサービス会社に運用を一任するという方法もありますが、運用に慣れてきたら、ロボアドバイザーにはアドバイスだけもらって(あるいは自分で勉強をして)、自分で非課税の口座を利用して買い付けをしたり、リバランスをしたりするのも1つです。

長期投資をする上で、手数料や税金の優遇は見逃せないからです。たとえ少額であっても、非課税口座は積極的に利用したほうがよいでしょう。また、ロボアドバイザーも受けるサービスによって通常は手数料が変わるからです。

「一般NISA」と「つみたてNISA」の違い

ここで、「NISA」について簡単におさらいしましょう。

「一般NISA」を利用すると、年間120万円までの投資枠内なら株式投資に対する収益(配当や売却益)に対して税金がかかりません(非課税で運用できる期間は投資をした年から5年間です)。

「つみたてNISA」の場合は、定期・定額での積立投資に限定した制度で、年間40万円までの投資枠に対し、その利益が20年間非課税となる制度です。一般NISAとつみたてNISAの違いは、非課税期間と年間の非課税枠、投資対象などです。

一般NISAは非課税期間が5年なのに対し、つみたてNISAは20年と“長期投資”ができるのがメリットです。20年間にわたって上限40万円の積立を続ければ、投資総額は800万円となるので、一般NISAの600万円(120万円×5年)より大きくなります。

投資対象は一般NISAの場合、上場株式やリートなどにも投資できますが、つみたてNISAの場合は投資信託やETFなどに限定されます。

一般NISAとつみたてNISAは同じ年に同時に使うことは認められず、どちらかを選択することになります。

NISAの大きなメリット「換金のしやすさ」

少額でコツコツ貯めたいという人はつみたてNISAがよいと思いますが、人によっては一般NISAの方が向いている場合もあります。

たとえば、積み立てではなく上場株式やリートなどに臨機応変に投資したいという方などです。一般NISAが利用できる限りはこの制度を利用し、5年経って非課税ではなくなった場合は、つみたてNISAを利用するという方法もあります。

資産運用をする際には「換金しやすさ」がかなり大きなポイントになりますが、NISAの最大のメリットは換金しやすさです。投資に回せる余剰資金がある場合は積極的に活用したいところです。

他方で「個人型確定拠出年金(iDeCo)」の場合は、原則60歳まで引き出せないので完全に老後資金の準備という形になります。

お子さんが2人もいるので、まずは教育費の準備ということなら、換金しやすいNISAを利用するのがよいでしょう。何のために育てるお金なのかという目的意識をしっかり持ち、中長期的な目線で考えると、短期的に損が出ても一喜一憂せずにおおらかに過ごせるようになります。

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