はじめに

読者のみなさんからいただいた家計や保険、ローンなど、お金の悩みにプロのファイナンシャルプランナーが答えるFPの家計相談シリーズ。今回は川口幸子氏がお答えします。

資産形成をするにあたり、お金の置き場所はどこがいいのかを知りたいです。親からの贈与などで1,000〜1,500万円の資産があります。ほとんどが、株(日本株、アメリカ株)、投資信託、債券(アメリカ国債)、金に投資をしています。ドル建ての終身保険と円建ての終身保険にも加入しています。 会社では確定拠出年金にも加入しています。

将来的に不動産投資も視野に入れているのですが、より合理的に資産形成をしたいと考えています。今の状況、世界情勢を含め、株式や為替のボラティリティが高い中で、ある程度安定した収益を上げるにはどうすればいいのでしょうか?

〈相談者プロフィール〉
・男性、25歳、未婚
・職業:会社員
・居住形態:賃貸
・住んでいる地域:大阪府
・手取り月収:20万円
・毎月の支出目安:17万円


川口: ご質問ありがとうございます。

まずは投資内容をしっかり把握して管理する

資産形成にあたり、お金の置き場所がどこがいいのかということですが、贈与などで1,000万~1,500万円の資産があり、ほとんどが株、投資信託、債券、金に投資とのこと。株の銘柄、投資信託の内容などがわかりませんが、分配型なのか再投資型なのか、税金や手数料などのコスト等も含めて内容を把握し、管理されるとよいですね。

ドル建てと円建ての商品は10年払いのものなのか、60歳、65歳払いのような老後を視野にしたものなのかを含めて把握しましょう。10年払いであれば、その後、解約返戻金100%以上になった資産を活用するのか、そのまま増やしていくのかも考える必要があるでしょう。

また、確定拠出年金ですが、ポートフォリオはどのようにされているでしょうか。定期預金や年金型ですと金利は0%に近く「増やす」ということからは離れ、非課税枠を使って預金しているような資産作りとなります。まだ25歳という年齢なのでしっかり投資先を選んで、ポートフォリオを組み立てられるとよいと思います。

「いつ使うお金なのか」目的別に分散投資の検討を

また、手取り20万円で支出が17万円といいますと、残りの約3万円が貯蓄に回せるお金となりますでしょうか。支出の中で、抑えられるものや無駄なものがないかなど、一度点検してみるのもよいでしょう。

3万円のうち、短期間で必要となるお金は手元の貯金へ、中期間(5~10年)で必要となるお金は安全性の高いところに預けて、10年以上のしばらく使わないお金はぜひ収益性のよいものへ分散投資をされるとよいと思います。

ドルコスト平均法を用いて、コツコツ分散投資するのもアリです。毎月一定額を投資信託(ファンド)に入れることで、「時間」を味方につけてお金を働かせることも可能です。

不動産投資のメリットと注意点

不動産投資を視野に合理的に資産運用をしたいとのことですが、投資用マンションを購入して定年までにローンを完済させておけば、老後に支給される公的年金に加えて、安定した賃貸(家賃)収入を得ることができます。

不動産投資のメリットは以下の通りですので、ご参考になさってください。

<不動産投資のメリット>

【所得税・住民性の節税】
建物の減価償却費やローン金利、さらに固定資産税、都市計画税などが必要経費として認められます。家賃収入から差し引くことで、赤字>部分を損益通算できます。給与所得や事業税などの他の所得から差し引きして申告することで、所得税・住民税の節税につながります。
【相続対策】
購入した投資用不動産は時価で評価されます(おおよそですが、建物部分は取得価格の50%、土地部分は時価の80%で評価)。賃貸中は、>さらに土地・建物ともに2~3割減の評価額を受けますので、相続対策として有効です。
【インフレ対策】
インフレになった場合、物価上昇にともない、預貯金などの貨幣価値が低下(目減り)し、投資物件の資産価値や賃料の上昇が想定されます。

加えて、注意点は以下の通りです。こちらもご参考になさってください。

<不動産投資の注意点>

【空室リスク】
ほとんどの空室の原因は立地と賃料設定にあります。 対策としては、優良物件を確実に購入すること、リフォーム等で物件価値を高めること、入居者を確保するために家賃を下げること、空室保証サービスの活用などいくつかの方法があります。
【建物の老朽化】
経年変化による建物の老朽化は避けられません。老朽化した建物をそのままにしておくと、入居者が退去した際に新たな入居者が決まらないという空室リスクが高まります。常に物件を最良の状態に維持する「長期修繕計画」を十分に検討しておく必要があります。
【金利の上昇】
ローンを利用して不動産投資をする場合、特に変動金利を選択した場合には返済額アップのリスクを負うことになります。返済期間を短く設定する、繰上げ返済をする、固定期間を長くするなどの対策が有効です。
【資金流動化のリスク】
将来売れなくなるかもしれないというリスクがあります。
【不動産価格の下落リスク】
投資した不動産が購入した時よりも下落した場合は、損失を抱えます。不動産価格の下落リスクを避けるには、値下がりリスクに強い優良物件の確保、リフォームなどの老朽化を回避する運営管理が必要になります。

不動産を購入するときには、仲介手数料・ 印紙税 ・登録免許税・不動産取得税といった諸費用がかかりますので、そちらも頭に入れておく必要があります。

収入を上げることも視野に入れて

「安定した収益をあげるためにはどうしたらいいか」につきましては、25歳未婚とのことですので、「時間」と「若さ」があります。

ぜひ、収入を上げることも視野に考えてみてはいかがでしょうか。支出のチェックや見直しも大切だと思います。

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