はじめに
絶えず進化を続けた60年の歴史
60年もの長きにわたって売れ続けてきた理由を、數原マネージャーは「絶えず進化し続けてきたからではないでしょうか」と分析します。
1972年には、今や野球盤の代名詞になった「消える魔球」が登場。当時の人気漫画『巨人の星』にヒントを得たものでした。1980年代になると、プロ野球の世界でも一般的になったスピードガンを搭載したモデルが発売されました。
1988年に発売された「ビッグエッグ野球盤」
進化の流れが加速したのは、2000年代に入ってから。2009年には実況音声がつけられるようになり、2010年には高反発バットが採用され、打球がスタンドまで飛ぶようになりました。
2015年からはピッチャーの投げたボールがホップする「3Dピッチング機能」が搭載されるようになり、2017年からはオーロラビジョンでカラーのアニメーションが表示できるまで進化しました。
3Dピッチングで投球もホップ
一連の進化の中で特に苦労したのが、ボールが飛ぶギミックの開発だと數原マネージャーは振り返ります。これまでも、ビッグエッグ版など透明のフタが付いたタイプではボールをスタンドまで飛ばすことができましたが、すべてのタイプでボールが飛ぶわけではありませんでした。
しかし、2010年発売の「スラッガー」では、バッターの打ったボールが実際にアーチを描いてスタンドインするようになりました。「何万打も試し打ちして、ゴムの性質やバネの種類を見直し、ボールのスタンドインを実現させました」(數原マネージャー)。
リアルさの表現を突き詰める
絶えず進化を続けてきた野球盤ですが、一方で変えない部分も大事にしてきたといいます。根底にあるのは、野球としてのリアルさを表現すること。つまり、ピッチャーとバッターの対戦をどこまで突き詰めるか、ということだそうです。
「技術やITの進化を踏まえて、いかに本物の野球に近づけるか。まだできていないことはたくさんあります」(數原マネージャー)
実は、60周年の記念商品の隠し玉として、6月に最新機能が付いた集大成モデルを発売する予定だそうです。「正統進化として最高モデル」と、數原マネージャーは胸を張ります。
60年の間には、野球盤の模倣品もたくさん出てきました。しかし、そのたびに進化によって突き放してきました。その背景には、短期的なヒットではなく、じっくり良いものを作っていこうという、エポック社のDNAがあったといいます。
次なる野望として、同社ではアジアや米国など海外での展開を描いています。人間の世界でも人生100年時代を迎えた昨今。玩具の世界でも100年選手が生まれるとすれば、その最右翼は野球盤なのかもしれません。