4月24日のニューヨーク市場で、米10年国債利回りが4年3ヵ月ぶりに一時3%台に乗せる場面がみられました。

この動きを受け、為替市場では当初、金利上昇を評価したドル買いが優勢となると、ドル円は2月前半以来の1ドル=109円台前半まで上昇しました。しかし、その後NYダウ平均株価が一時600ドルを超える下落となると、徐々にリスク回避の円買いが優勢となり、1ドル=108円台後半に押し戻される動きとなりました。

この日のNYダウは最終的に420ドルほどの下落で終えており、「混乱」というほどではないものの、「比較的大きな下落」となりました。これが、2月にみられたような金利急上昇・株価急落・ボラティリティ急騰といった市場の混乱につながるのか、それとも冷静な反応に回帰していくのかが、今後のドル円相場の行方を決めるとみられます。


なぜ金利が上昇したのか

今回の金利上昇の背景としては、以下のような点が考えられます。

(1)同日発表された住宅関連指標が良好だったように、米国の良好な経済環境と、これを背景とした米連邦準備理事会(FRB)の緩やかな利上げ継続期待
(2)3月にかけて高まっていたシリアなどの地政学リスクや貿易戦争懸念が緩和傾向となったこと
(3)原油価格の上昇などを背景に物価上昇期待が高まったこと(による利上げペース加速期待)
(4)昨年末の減税法案成立などを背景に、国債の増発による需給悪化や財政悪化への懸念

基本的には(1)を評価した部分が大きいと考えています。後述の通り、基本的には楽観視していますが、混乱となれば「リスク回避の円買い」でドル安円高、冷静な対応となれば「金利上昇を評価したドル買い」でドル高円安となるでしょう。

2月と今回で何が違う?

今回、注目されるのは、2月の相場急変時に比べ、株式市場で“恐怖指数”と呼ばれるVIX指数の上昇が限定的にとどまっていることです。2月の際は、米長期金利の急上昇を受けてVIX指数も急伸し、米株価の大幅下落を招きましたが、今回は今のところ、上昇の勢いは限定的です。

今後数日の間に、金融市場が混乱の度合いを増していくのか、それとも冷静な対応が主流となるのかを見極めたうえで、ドル円は上下の方向性を決めるとみられます。

みずほ証券投資情報部では、基本的に今回の下落が2月のような混乱につながるとは考えていません。米国の成長率や物価、政策金利や財政収支などを基にした私たちのモデルによれば、現状の長期金利3%は米経済を反映した適正水準(下図)。2018年年末には3.4%程度への上昇を見込んでいます。

財政に対する懸念は確かにあるものの、現状程度の金利水準は米国の経済成長と利上げを適切に評価した水準であり、市場も冷静な対応に落ち着いていくだろうとみています。

逆に、今後数ヵ月のうちに3.5~4%を超えるような急激な金利上昇となれば、それは「悪い金利上昇」としてドル安とリスク回避の円高につながる可能性もあります。今後の米金利の動きにも一定の注意が必要でしょう。

日銀はどう動くのか

ドル円相場を考えるうえでは米国金利に加えて日本の金利も考える必要がありますが、これについては低位で安定した状態が続くとみています。日本銀行が緩和解除に動けないと考えているからです。

3月にかけて、一時1ドル=104円台までドル安円高が進みました。日銀が今、緩和解除の姿勢を示せば、1ドル=100円を割り込むような円高を招く可能性もあります。この水準では輸出企業の減益や赤字が相次ぎ、景気回復の芽を摘みかねません。

また、年後半には、来年の消費増税が決まる可能性もあります。増税に向けて景気を加速させたい状況下、日銀は現状の緩和姿勢を継続するとみています。

結果、日米の景況感格差や金融政策の方向性の違い、これによる金利差拡大などは今後も継続し、来年にかけてのドル円相場を下支え要因となりそうです。

(文:みずほ証券 チーフFXストラテジスト 鈴木健吾)