はじめに
「スプレッドは業界最小にする」
一方で、「あっという間にナンバーワンになる」ための施策も進めています。その拠りどころとなっているのが、SBIグループのこれまでの実績です。
同社では、FX取引のマーケットインフラを提供するSBIリクイディティ・マーケットの営業を2008年11月に開始。当初は2009年3月期に4億円の営業利益を目標としていましたが、実際には8.4億円の営業利益をたたき出しました。
また、2012年5月に営業を開始したSBIFXトレードでは、会社設立から1年強で累積損失を解消しました。いずれのケースでも原動力となったのは、SBIが作ってきた金融生態系と2,300万口座を超えるグループの顧客基盤が持つ力だと、北尾社長は言い切ります。
仮想通貨ビジネスにおいても、2017年8月に設立したSBIクリプトでビットコインキャッシュのマイニングを始めています。また、香港のグローバルマックスが本格的に稼働することで、日本と香港の連携プレーも期待できるようです。さらに、SBIHDはXRPを発行するリップルの大株主でもあるため、さまざまな手法でXRPの供給が可能だといいます。
「証券でも手数料を最小にして、お客さんを増やしてきました。仮想通貨でもスプレッドはナローエストにしろと言っています。われわれが最低のスプレッドを目指せば、これまで泡銭を儲けていた取引所が儲からなくなり、皆パンクするでしょう」(北尾社長)
BCHとXRPに注力
SBIの仮想通貨取引所で取り扱うのは、ビットコイン、イーサリアム、XRP、ビットコインキャッシュの4種類だといいます。中でも、ビットコインキャッシュとXRPに力を入れていく方針です。
北尾社長は「ビットコインは80%強がマイニングされ尽くして、希少資産として皆売らなくなっています。あまり他の用途にも使えないし、決済通貨としてもしんどい。値段も高くなりすぎている」と、ビットコインを切って捨てます。
逆に「ビットコインキャッシュは実用性があって、特に決済通貨として使えます。XRPも送金通貨として有効です。貿易金融などでも使える余地があるとみて、働きかけています」と、注力すると表明した2つの仮想通貨を評価。匿名通貨については、「一切やらない」と断言しました。
4月6日にコインチェックの買収を発表した、マネックスグループの松本大社長(中央)
また、マネックスグループがコインチェックをアーンアウト条項付きの36億円で買収した件について聞かれると、北尾社長は「僕からすると、1銭の価値もない。やるといわれても、いらん。どうなるかわからない訴訟案件を抱えている。社名も人口に膾炙している。そんな運気のない名前の会社に興味はない」とバッサリ。
国内外で発生した仮想通貨にまつわる問題やそれを受けた規制動向、そしてそれらを踏まえた業界の動きやグループ内での体制整備。さまざまな事象が複雑に絡み合う中で、ようやく重い腰を上げたSBIHD。買収ではなく、自前主義でテッペンを取ると決意した心意気は、どんな姿で具現化されるのか。その結論は、あと数ヵ月で出てくることになります。