はじめに
読者のみなさんからいただいた家計や保険、ローンなど、お金の悩みにプロのファイナンシャルプランナーが答えるFPの家計相談シリーズ。今回は花輪陽子氏がお答えします。
財形貯蓄はしていますが、貯蓄がほとんどありません。固定費の見直しや、投資を考えたりしていますが、まず何から手をつけたらいいのかが分かりません。固定費の見直しと投資、どちらを優先させるべきなのでしょうか。
〈相談者プロフィール〉
・女性、53歳
・職業:会社員
・居住形態:持ち家(マンション)
・手取りの世帯月収:22万円
・毎月の固定費:18万円
花輪: 投資以上に固定費の見直しが大切です。真っ先に行うことをおすすめします。なぜなら、固定費の削減は投資をするための種銭を作ることができるからです。
毎月かかる“4大固定費”
固定費とは、毎月固定で決まってかかる費用のことです。なかでも金額の大きい**「自動車費用」「保険料」「住居費」「教育費」**を、私は4大固定費と呼んでいます。この4大固定費をいかに小さく抑えるかが、種銭づくりの最大のポイントです。
4大固定費の中でも、削りやすいのは保険料(生命保険)や自動車維持費です。住居費は一度決めてしまうと大きく変動させることは難しく、また教育費は個人の考え方によるところが大きいからです。
保険料を節約する“2つのルール”
毎月の保険料はとても大きな支出になります。生命保険文化センターが実施した「生活保障に関する調査」(平成28年度)によると、年間払込保険料(一時払や頭金の保険料は除く)の平均額は19万7,000円です。
保険をリストラする方法は、いたってシンプルです。たった2つのルールさえ押さえておけば、生命保険だけではなく、医療保険、損害保険を考える際にも当てはめることが可能です。
【ルール1.】 保障を絞る
【ルール2.】 安価な商品を選ぶ
生命保険は一家の大黒柱の、万一に備える遺族保障を目的にする保険です。同調査によると、生命保険加入金額の平均は、男性で1,793万円、女性で794万円というデータがありますが、万一のためにいくら準備をしておけばよいのか考えてみまましょう。
私がアドバイスしている目安は、「ざっくりと子どもの教育費として1人当たり1,000万円(子どもの成長に伴い必要保障額は減らせる)、家族の傷が癒えるまでの2〜3年間の生活費として年収の3倍程度」 というものです。
たとえば、年収500万円で小さなお子さんが1人いる場合は2,500万円ということになります。貯金や入っている保険(学資保険など)、持ち家などの資産がある場合は、その分だけ保障を減らしてもよいでしょう。会社の福利厚生(遺族弔慰金など)を確認しておくことも大切です。貯金が500万円あるとしたら、保障は2,000万円に減らすこともできます。
ルール2の安価な商品という点では、勤務先で団体加入できる生命保険や共済、ネット生保やダイレクト生保などがおすすめです。
たとえば、35歳男性で死亡保障2,000万円(10年更新型)なら、月3,000円前後から探すことができます。たばこを吸わずに、保険会社が定めた健康状態などの基準を満たす場合は、さらに割引を受けることができる商品もあります。
このように、必要な保障を安価にかけることにより、保険料を大幅にカットすることが可能です。現在、加入している保険料が高いという場合は見直しを検討しましょう。その場合は必ず、新しい保険契約が有効になってから、古い契約を解約するようにしましょう。
自動車を所有すると年間いくらかかる?
次に、自動車維持費の節約について考えてみましょう。
たとえば、300万円の自動車に7年間乗る場合のコストは、自動車税に年4万5,000円、ガソリン代に年6万4,000円(燃費23.4km/L、1年間の走行距離1万km、ガソリン代150円/Lとする)、車検時に自動車重量税として2万円なら、7年間で約380万円かかることになります。
つまり1年当たりのコストとして、約54万円です。この他にも、自動車保険に年5万円、点検費用・消耗品の交換費用に年5万円、駐車場代に年24万円かかる場合、年間で約90万円の費用になります。1ヵ月あたり7万5,000円です。
これをリストラする一番いい方法は、都心に住む人は思いきってカーシェアリングに切り替えることです。
月額基本料金1,000円(利用料金込)程度を支払うことで、15分200円(1時間当たり800円)程度から借りることができます。また、カーリースを利用する方が、自動車ローンを組むよりも月々の支出を抑えることができる場合もあります。
地方で自動車がないと不便という場合は、自動車のダウンサイジングを検討するのも手です。燃費のよい軽自動車やコンパクトカーにすれば、コストを半分以下に下げることも可能です。
100万円の軽自動車の場合、自動車税は年7,200円、ガソリン代に年5万円(燃費30km/L、1年間の走行距離1万km、ガソリン代150円/Lとする)、車検時に自動車重量税として1万円で、7年間のコストは約140万円です。軽自動車ほどではありませんが、コンパクトカーも十分にリーズナブルになります。
固定費を削減させることによって、投資に回せるお金を捻出することができ、より有利に資産運用をすることが可能になります。