はじめに

読者のみなさんからいただいた家計や保険、ローンなど、お金の悩みにプロのファイナンシャルプランナーが答えるFPの家計相談シリーズ。今回は花輪陽子氏がお答えします。

母の老後、自身の老後、そしてこれからのキャリアについて悩んでいます。

現在、法律事務所でパラリーガルとして働いています。年収は手取り350万円。夫は都道府県職員で年収は手取り400万円です。両親は20年前に離婚し、母は無職で貯蓄もほとんどありません。母の老後の生活資金は、国民年金月3万円、私からの仕送り月3万円、母の養老保険が4年後に1,000万円、リバースモーゲージで9年後以降に極度額約1,000万円を工面する予定です。ただ、介護や入院が必要になった場合の費用を捻出できるか不安です。私は仕事を続けたいですし、同居して介護をしたくないと考えています。

また、自身の老後も不安です。両親が離婚して母が経済的に苦しくなったことから、私は夫の収入を考慮せずとも生きていけるような人生設計をしたいと考えています。住宅はずっと賃貸を考えています。体に自由がきかなくなったら施設に入りたいと思っていることから、民間の介護保険に複数加入しています。

【加入している保険】
・円建て終身保険:1.4万円(受取人は母、60歳払済)
・ドル建て個人年金:1万円(60歳から終身年金受取可能)
・介護保険:1万円(掛け捨て)
・就労不能保険:0.2万円(支払・保障期間65歳まで))
・収入保障保険:0.1万円(受取人は母、支払・保障期間65歳まで)
・医療保険:0.2万円(支払期間65歳まで、終身保障)

【母親について】
・母:56歳、無職
・障害年金:年72万円受給
・ローンのない都内の持ち家(評価額約2,000万円)に居住
・養老保険:1,000万円を60歳で受取予定
・国民年金:年36万円を65歳から受給予定

〈相談者プロフィール〉
・女性、28歳、既婚(夫:31歳)、子供なし
・職業:会社員
・居住形態:賃貸
・手取りの世帯月収:26万円
・毎月の支出目安:26万円


花輪: 保険料が毎月3.9万円とやや高いです。また、保険の受取人がお母様になっているものが多いです。後から変更をしたい場合は保険会社に連絡をして、受取人の変更をすることも可能です。契約件数が多いので大変ですが、定期的に保険内容をメンテナンスしていきましょう。

保険より“貯金”で備えれば楽しみのためにも使える

人生に起こりうるさまざまなイベントが心配だから、保険に入っておきたいという気持ちはよく分かります。

介護が必要になる確率は?保険より「貯蓄で備える」が正解」でもお伝えさせていただきましたが、保険ではなく、貯金で備える方法もあります。貯金で備えれば、幸いにも不幸が起きなかった場合には楽しみのために使うこともできます。

また、以前、私は1億円の現金預金があるにもかかわらず、「とにかく老後が不安だ」という60代の女性とお話をしたことがあります。老後の不安は精神的なことによるところも大きいので、周りを信頼して周囲と調和して生きるということも大切です。

両親が離婚されて経済的に苦しくなったことから、ご主人の収入を考慮せずに生きていけるような人生設計をするという相談者さんの考え方はご立派ですが、お金のことをご主人と話し合うことも大切です。

夫婦2人でお金のことやライフイベントを乗り越えることによって、強い絆ができていくことも多いです。1人で悩むよりも2人で解決した方がよい解決法が出る場合もあります。

介護施設に入るといくらかかる?

次に、お母さまが介護や入院が必要になった場合の費用についてです。

首都圏では、安価な特別養護老人ホーム(特養)に入ることは難しく、待機しなければならない場合が多いです。

特養は高額な入居一時金もなく、月額料金も10万円程度と、民間の有料老人ホームに比べると非常に安価です。要介護のレベルが高いなど、必要性の高い人が優先的に入居できるのが特徴です。

一方、有料老人ホームの場合は入居一時金に1,000万円以上、月額料金に20万円以上かかることもよくあります。入居一時金がない施設の場合は月額料金が高くなるのが一般的です。

現状の老後資金で入居できるのは?

これに対して、お母様の年金額を考えていきましょう。

公的年金では、支給事由が異なる2つ以上の年金を受けられるときには、ご本人がいずれか1つの年金を選択することになります。障害基礎年金と老齢基礎年金をあわせて受けることはできず、いずれかを選択することになります。お母様は50歳を超えているので、ねんきんダイヤルに問い合わせをすれば年金の受給額を確認することもできます。

年金等の収入が年72万円、相談者さんからの仕送りが年36万円。リバースモーゲージで1,000万円、保険の満期金が1,000万円だとして考えてみましょう。

特別養護老人ホームに入れる場合であれば、不足分を保険の満期金などから取り崩していけば、なんとか工面できそうです。

たとえば、生活費や施設の料金などに年150万円程度、収入が年100万円程度だと仮定しましょう。毎年50万円赤字になるとしても、1,000万円あれば20年間カバーをすることが可能です。加えてリバースモーゲージも利用できれば、長生きしたときのリスクや老後の医療費などにも備えることができます。

有料老人ホームの場合は入居一時金がかかる施設が多い上に、月額利用料金も20万円以上と高額なために、現在の資産と収入からでは厳しいと言えます。在宅介護でヘルパーを利用するという方法もありますが、個人事業主でフレキシブルな働き方でないと厳しいかもしれません。

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