はじめに

読者のみなさんからいただいた家計や保険、ローンなど、お金の悩みにプロのファイナンシャルプランナーが答えるFPの家計相談シリーズ。今回は内藤忍氏がお答えします。

今年から新卒で入社しました。投資の手始めとして、確定拠出年金を選択したのですが、上手な運用方法などは正直3時間程度の説明では理解できませんでした。おそらく勤務先の企業は業務が忙しく、今後、運用まで気が回らないと思います。ですので、効率の良い運用の仕方、毎年確認したほうがよいポイント、気をつけていた方がよい情報、ニュースなどありましたら教えてください。

せっかく貰えるお給料なので、より自分に利益があるように運用していきたいと思っています。よろしくお願いいたします。今後の月収は30万円で、これから少しずつ収入が上がっていく見込みです。現在は資産と負債は一切ありません。
(20代前半、男性、独身)


内藤: ご質問ありがとうございます。

確定拠出年金には税金の繰り延べ効果がありますから、特にご質問者のような20代の方で長期の資産運用を予定している人は、有効に活用すべき制度だと思います。

投資する上で注目すべきは“管理コスト”

金融商品を使った資産運用で大切なことは「コスト」です。確定拠出年金を使って運用する場合の金融商品は投資信託が中心になりますが、商品によって「信託報酬」と呼ばれる年間の管理コストが異なります。

投資信託の運用手法は、インデックス運用とアクティブ運用に分けられます。それぞれの運用方法を使ったファンドをインデックスファンド、アクティブファンドと呼びます。

インデックスファンドは市場の平均値に連動した運用成果を目指すものです。たとえば日本株であれば、日経平均やTOPIXに連動するような商品になります。

インデックスファンドと対照的な運用方法であるアクティブファンドは、市場平均を上回る運用成果を目指して、ファンドマネージャーが銘柄選択を行っていく運用手法です。

2つのファンドを比較した場合の違いの1つはコストです。インデックスファンドの方が信託報酬が低くなる傾向があります。

選ぶなら確実さを狙って「インデックス運用」を

もう1つの違いは運用成果です。実は、市場平均を上回る運用成果を目指すアクティブファンドでも、実際に平均値を上回っているファンドは、全体の半分程度に過ぎないのです。

逆に言えば、上回る目標を掲げていても、結果として平均を下回る可能性もあるということになります。

過去の運用実績は、運用レポートで確認できますので、調べてみるとよいでしょう。ただし、過去の運用成果がよかったからといって、将来を保証するわけではありません。

であれば、最初からコストを下げて平均点を確実に狙いに行くインデックスファンドを選んだ方が、賢明な投資方法だといえます。

確定拠出年金の商品ラインアップは、インデックスファンドとアクティブファンドが混在しているのが通常ですが、インデックスファンドを中心に資産を構成していくべきだと考えます。

もし、確定拠出年金の商品ラインアップの中にアクティブファンドしかない場合は、自分で資産運用して、それを補うのがよいでしょう。

確定拠出年金にこだわらず、保有資産で調整する

資産はアセットアロケーション(資産配分)を決めて、それに沿った商品を選択していきます。

資産配分をする際には、確定拠出年金だけを管理するのではなく、運用しているほかの保有資産も合わせてチェックしましょう。

たとえば、確定拠出年金はコストの低い国内株のインデックスファンドを100%にしても、自分で外国株式のインデックスファンドを同額投資すれば、全体の資産配分を日本株と外国株が50%のポートフォリオにすることができます。

確定拠出年金の商品ラインアップに魅力的な商品が入っていない場合は、自分でインデックスファンドを組み入れて調整していくのです。

ネット証券には低コストのインデックスファンドが豊富に揃っています。確定拠出年金の商品をチェックして、低コストのインデックスファンドがない場合は、あえて確定拠出年金では投資しないで、自分で運用する資産で補うようにすれば効率的な運用が実現できると思います。

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