はじめに
読者のみなさんからいただいた家計や保険、ローンなど、お金の悩みにプロのファイナンシャルプランナーが答えるFPの家計相談シリーズ。今回は内藤忍氏がお答えします。
50代前半、現在は人材提供などを行う従業員10名程度の会社でみなし役員をしています。年収は2,000万円弱で、預金は8,000万円ほど、マンションのローンは終了しています。今まで資産運用をしておらず、不動産や株なども持っていません。確定拠出年金には毎月6万8,000円を支払っています。
今後のことを考え、課税所得を減らす(節税)ために税制上のメリットがある商品を運用したいのですが、おすすめはありますか。会社に出資はしていますが役員として登記をしていない“みなし役員”ですので、小規模企業共済は資格から外れるのではないかと思います。アドバイスをいただけると幸いです。
(50代前半 男性 既婚・子供なし)
内藤: ご質問ありがとうございます。
税金はあくまで投資方針を決めた上で考慮するもの
資産運用を行う上で、税金は実質の資産の増え方に影響を与える要因のひとつです。しかし、税金のことばかり考えて投資対象を選択すると、最善の投資にならないことも多いので注意が必要です。
たとえば、相続税対策のために不動産を活用してアパート経営を始めるといったケースがあります。
しかしながら、税務上不動産の評価額を下げることで一定の税金上のメリットがあったとしても、不動産の価格自体が下落してしまい、売却損になってしまうのであれば本末転倒です。
税制についての知識は必要ですが、それは最優先の事項ではなく、投資の基本方針を決めた上で、考慮すべきものだということです。
金融商品で投資するならNISAを活用
税制は投資対象によって変わってきますので、金融商品と不動産のような「実物資産」に分けて考えると理解しやすくなります。
証券であれば、NISA(少額投資非課税制度)を活用する方法があります。これは2014年1月からはじまった税制優遇措置で「株や投資信託(投信)などの運用益や配当金を一定額非課税にする制度」です。
イギリスのISA(個人貯蓄口座)という制度を参考にしており、最長5年間、年120万円までの非課税投資枠が設定され、株式投資や投資信託にかかる値上がり益や配当金(分配金)が非課税となります。
金融資産を使った資産運用をこれから始める人は活用すべき制度です。ただし、非課税枠を使っての投資総額は合計600万円までとなっており、それ以上の金額は非課税の対象とはなりません。
金融商品では、NISA以外にも保険を使った節税方法などもありますので、調べてみてください。
不動産投資はルールに則った納税を
一方、不動産の場合は、前述のような相続税の課税評価額の圧縮だけではなく、減価償却によって所得税の圧縮ができる場合があります。不動産の建物は法定の減価償却期間が決められており、そのルールに従って費用として計上することができるからです。
木造住居の場合、22年が法定耐用年数ですが、法定償却期間を過ぎた建物は、その20%をみなし償却期間とすることができ、最短4年で償却が可能になります。
たとえば建物評価が4,000万円であれば、毎年1,000万円を減価償却として計上できることになります。
これは、建物価値が土地に比べ高く、築年数の古い木造建物でも投資の対象として賃貸することができるアメリカの不動産などで特に有効です。
一方、税務に関しては、常に正確な情報を収集し、税制に乗っ取った納税が前提になります。詳細に関しては、税理士や税務署にご確認された上で、慎重にご判断いただくようにお願いいたします。