はじめに

立夏(りっか、5月7日)が過ぎて、暦の上では夏の到来です。夏日も多くなり、気軽にTシャツで外出する人も増えてきました。

重ね着が減ると気持ちも軽くなりますが、私のように体重が気になる人の中には、薄着でお腹まわりが目立つのではと気になる方もいらっしゃるかもしれません。

寒かった時期に外出も億劫で、食べ過ぎや飲み過ぎが気になっていた方の中には、この時期、運動を始めようかと思う人が少なくないようです。5月から夏にかけて、フィットネスクラブ(ジム)では会員数が大きく伸びる時期になります。

そこで今回はジムを取り上げてみます。実は、ジムと株価の間には意外な関係があるのです。


長年のジム通いから見えてきた傾向

実は私、「健康オタク」です。とは言っても、食事に気を遣ってカロリーコントロールするといったストレスになることには興味がなく、ジムでエアロビクスやダンスのクラスに参加して健康になった気で満足しているため、他人からは“自称”健康オタクに過ぎないと言われます。

ただ、ジム通いを20年も続けていると、ジムの中でのいろいろな変化が景気や株価と密接に関係していることがわかってきます。1990年代は、バブルのなごりから1999年のITバブルに向けて国民も元気な時代だったこともあり、男性もレオタードでエアロビクスすることが人気でした。

一方、近年は健康志向が中心で、年齢層も比較的高く、Tシャツスタイルでストレッチやヨガが人気です。わが国の成熟に向けた流れを顕著に映しています。

身の回りの情報と株価の関係を見つけていくには、まず自分の趣味やよく知っていることから探すのが最適です。詳しい分野ならば、ちょっとした変化でも景気や株価の関係との気づきも多く、また深くなるからです。

話をジムに戻しましょう。ジムの変化は、長期の経済の動きだけでなく、短期の景気や株価とのつながりも見られます。「ジムを利用する人が増えると、株価が上がる」という意外な関係があるのです。

ジム歴が長い私の経験では、景気が良く、仕事が順調に感じている時期ほど、休日も含めてジムに行く日が多くなるような実感があります。「いや違うだろう。景気が良くて仕事が忙しいと、ジムなんか行く余裕もないんじゃないか」との思う読者も多いでしょう。ところが、そうでもないようです。

仕事が充実していると、休みにリフレッシュで体を動かして健康になろうという気持ちも強まったりします。一方、景気があまり良くなかったり、先行きの不安が大きい時は、体を動かすポジティブな気力もなくなってしまいます。ストレス解消といえば、近場に飲みに行ったりという過ごし方にもなりがちです。

もちろん、全員がそうともいえないようですが、ジムにいる数人にも聞いてみました。やはり、そんな実感の方が多いようです。確かにジムの混み具合を見ると、景気や株が好調な時のほうが人が多い印象です。景気が悪いときは、ジムどころか運動にお金を使う余裕もなくなる人が多いのかもしれません。

データからも検証可能なのか

そこで「ジムを利用する人が増えると、株価が上がる」を、データを使って確認してみましょう。ジム利用者データは、経済産業省が特定サービス産業動態統計調査の項目の1つとしてウェブサイト上で公表しています。2003~2017年の15年間のジム利用者と日経平均株価の推移を並べてみました。

図1で、ジムの利用者はおおむね一貫して伸びています。これでは日経平均の変動と関係が見えません。

ジム利用者が趨勢的に増えているのには、いくつかの理由があります。まずは、国民の健康志向の高まりです。それ以外でも、仕事をリタイアされた方の入会が増えたことも理由の1つです。2000年代半ばからの利用者の増加は、団塊の世代のリタイアとも関係しています。

また、ジムの多様化も大きな理由の1つです。近年では24時間ジムや、スタジオやサウナなどの設備は置かずに、運動マシンのみ設置する低料金ジムも見られます。通いたい人が、自分の時間や予算に合わせて、ジムを選べる便利な時代になりました。

しかし、このグラフではジム業界全体が発展してきたことはわかりますが、「ジムを利用する人が増えると、株価が上がる」はわかりません。

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