はじめに
文化推しの命名「よさこいおきゃく支店」
地元文化に基づいた命名もあります。
例えば筑波銀行(茨城県)の「つくばのガマぐち支店」は、筑波山名物のガマの油を財布のがまぐちに引っ掛けた命名。大光銀行(新潟県)の「えちご大花火支店」は、地元名物の長岡まつり大花火大会にちなんだ命名。福井銀行(福井県)の「ジュラチック王国支店」は福井県の公式ブランドにちなんだ命名(同県が恐竜化石の宝庫であることから)。尼崎信用金庫(兵庫県)の「ウル虎支店」は阪神タイガースにちなんだ命名。愛媛銀行(愛媛県)の「四国八十八ヶ所支店」はもちろん、四国巡礼にちなんだ命名となっています。
このパターンのうち、筆者が個人的に興味を惹かれたのは高知銀行(高知県)の「よさこいおきゃく支店」という命名です。
まず「よさこい」は、地元の民謡・踊り・祭りの名前でもありますが、そもそもの意味は「夜(よ)さり来(こ)い」、つまり「夜にいらっしゃい」という意味なのだそうです。一方の「おきゃく」は、一見すると「お客」を意味するように見えます。それはそれで正解なのですが、実は地元の言葉で「宴会・酒宴」という意味も持つのだそう。これは高知県民に愛されている飲酒文化なのだそうです。
よさこいおきゃく支店は「地元文化」がうまく凝縮されている命名ですね。
食べ物推しの命名「セルフうどん支店」
地元推しの命名パターンで、忘れてはならないのが「食べ物」で推すパターンです。
例えばきらやか銀行(山形県)の「ネットきらやかさくらんぼ支店」は、山形名物である「さくらんぼ」にちなんだ命名。中京銀行(愛知県)の「なごやめし支店」は、味噌煮込みうどんや小倉トーストなどの「名古屋めし」にちなんだ命名になっています。
個人的に興味を惹かれたのは、香川銀行の「セルフうどん支店」。これは讃岐うどん文化でよく見られる「セルフサービス方式のうどん店」にちなんだ命名になっています。銀行のネット支店とセルフうどん店は「セルフサービスにより、お得なサービスを提供する」という意味で、非常に似通ったもの。個人的にセルフうどん支店は「技あり」の命名であるように思っています。
人物推しの命名「ももたろう支店」
最後に人物推しの命名を紹介することにしましょう。
実在の人物を推している命名には、四国銀行(高知県)の「龍馬支店」があります。もちろん、地元出身の幕末志士・坂本龍馬にちなんだ命名です。また総称としての人物を推している命名には、秋田銀行(秋田県)の「あきぎんこまち支店」や北都銀行(秋田県)の「あきたびじん支店」があります。もちろんこれらは秋田美人にちなんだ命名となっています。
さらに架空の人物をモチーフにした命名もあります。トマト銀行(岡山県)の「ももたろう支店」がそうです。もちろんこれは昔話に登場する桃太郎のこと。岡山県が(諸説ありますが)桃太郎伝説の「ゆかりの地」として知られることからの命名となっています。
支店名が面白いと、サービス名も面白くなる
ということで今回は、既存銀行が新設する「ネット支店」の命名について紹介してみました。地元推しの命名の中にも、場所・特色・文化・食べ物・人物などさまざまな切り口の命名があることが分かりました。
ただ銀行の立場から見ると、支店名に面白い名前を付けるだけでは不十分。そのようにして命名した支店を通じて、魅力的なサービスを提供することも重要です。実際ネット支店のなかには、高金利の定期預金など、付加価値の高いサービスを提供しているところも少なくありません。
実はそのようなサービス名に「支店名にちなむ名称」も少なくないのです。例えば、清水銀行のみなとインターネット支店には「Bon Voyage(ボン・ボヤージ、「よい旅を」「幸運を」の意)」という名の定期預金があります。またトマト銀行のももたろう支店は「スペシャルきびだんご定期預金」を提供しています。
とりわけ面白いのが、大光銀行のえちご大花火支店と、香川銀行のセルフうどん支店です。
このうち、えちご大花火支店の場合、金利・預入期間などの違いにより「正三尺玉定期預金」「スターマイン定期預金」「超大型スターマイン定期預金」のサービスを用意。つまり花火の名前によって、提供するサービスのグレードを表現しています。
またセルフうどん支店の場合、提供するサービスの違いにより「宝くじトッピング定期預金」「金利トッピング定期預金」「超金利トッピング定期預金」を用意。追加サービスのことをトッピングという呼び方で統一しています。
このように支店名とサービス名のコンセプトが統一されていると、個人的には「ブランド管理が上手いなぁ」と感じてしまうのですが、皆さんはどうお感じになったでしょうか。