はじめに

株主からは15の質問

こうした経営方針に関する岡田社長の説明があった後、取締役9人の専任と、事前警告型の買収防衛策の継続という2つの議案が上程されました。これを受けて、株主との質疑応答が行われました。

質問に立った株主は総勢15人。主なやり取りは以下のようなものでした。

――アマゾンによるホールフーズ買収の話がありましたが、無人店舗についてイオンはどういうアプローチをしていくのですか。

岡崎双一執行役(GMS事業担当): 無人店舗は米国や中国で実験されています。イオンも昨年暮れから中国で無人店舗の実験をしています。日本では保健所の認可が下りないので、その問題を解決してから、検証を進めていきます。

――国際事業の営業利益の構成比は0.1%。かろうじて黒字です。前期はどんなことをやって、今後はどうしていくのですか。

若生信弥副社長(経営企画担当): 国際事業は前々期までは赤字でした。過去3~4年で抱えていた課題は、急速に出店を増やした反動で膨らんだ償却コストです。好調だった香港、マレーシアで店舗が老朽化したり、新規の客層に応えられるマーチャンダイジングができなかったという理由もあります。

しかし、投資はほぼ一巡して、収益を上げられる状況になりました。中国はまだ赤字ですが、2019年度には黒字転換する予定です。赤字幅は縮減してきています。安心していただきたい。

SNS対策で要望が相次ぐ

――イオンは新聞に広告を出していますが、新聞は発行部数に対して実際に配布しているのは半分程度。適切な広告料を査定しているのでしょうか。イオン公式のツイッターアカウントは18万人しかフォロワーがいません。従業員や株主にフォロ―してもらったほうがいいのではないですか。

岡崎執行役: 押し紙が大変な問題になっていることは認識しており、チラシを配る際は折り込み会社に確認して配布しています。印刷部数に無駄がない体制で臨んでいます。

ネットについては、SNSや媒体を使って広告宣伝しています。特に今は「お買物アプリ」を推奨しています。登録すると新聞折り込み以上の情報が入手できるので、ぜひダウンロードしていただきたい。

――中国からの観光客も多いと思いますが、SNSなどでいかにユーザーに直接情報を届けるのか、方策を教えてください。

岡崎執行役: インバウンドのお客様は大事にしようとしています。SNSやホームページでの運営に注力しています。クーポンも付けて対応しています。中国では旅番組で特番を年4回放送しています。また、ほぼ全店でアリペイ、ウィーチャットペイを使えるようにしています。

――イオンには、岡田卓也名誉会長をはじめ、名誉職が10人以上います。東京証券取引所は開示を推奨しているが、イオンはコメントしていません。考え方を教えてほしい。

岡田社長: 名前としていろいろありますが、特別な処遇はしていません。名誉会長も月100万円以外、特別な支払いはしていません。他の顧問の方も、特別なミッションに取り組んでもらっていることに対する処遇は、多くても月100万円。秘書や専用車を付けているわけではありません。

インフラ面の不満もチラホラ

――日本にはかなりたくさんの電子マネーが存在していて、少し使いづらい。電子マネーを統一する方向に国や企業として考えることはありますか。

若生副社長: WAONについては、ポイントチャージ方法が複雑だという依頼があり、3月に是正しました。電子マネーの統一については、現在のところ、国や企業として具体的な話は進展していません。ただ、国がキャッシュレス比率の向上に向けた動きを進めていますので、その中で議論されると思います。

――イオンモール幕張新都心の周辺は週末に渋滞が発生するため、週末は買い物に行かなくなりました。対策はないのでしょうか。

吉田昭夫執行役(ディベロッパー事業担当): 昨年、南北に接道する道路に開口部と信号を設置しました。免許センター側からアプローチする方が右折インできるようにしました。館内誘導も強化しています。将来的には新駅も含めて、さまざまな形でアプローチしたい。

――自転車でイオンに行く場合、電動バイクは普通の駐輪場に停めづらいです。イオンバイクで買った自転車がイオンの駐輪場に停められない。新店舗では子育て世代に配慮してもらいたいです。

岡崎執行役: イオンバイクでも電動バイクは主力商品です。早速検討して、停められる場所を早急に作りたいと思います。

招集通知と同時に優待券を配布

一連の質疑応答があった後、議題の採決が行われ、2案とも可決。株主総会は大きな混乱もなく、午前11時30分過ぎに終了しました。


招集通知と同時に株主に配られた特別優待券 

イオンの株主総会ではお土産は配られていませんが、招集通知に合わせて、イオンモール幕張新都心で使える特別優待券など、4種類の優待券が全株主に配布されています。この優待券は株主総会当日のみ利用ができるものです。総会終了後、会場前からイオンモール幕張新都心に向かうバスには長蛇の列ができていました。

本業の儲けを示す営業利益が過去最高を更新するなど、業績が好調に推移していることもあってか、厳しい質問が出なかった今年の株主総会。来年も無風の総会となるか否かは、変革の進捗度次第となりそうです。

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