はじめに

同業比較では収益力は高い

ただし、まったく別の見方もできます。中古品流通は社会インフラとして、なくてはならないものです。昔から小規模の店が全国にたくさんありました。ただし、どこも利益率が低く、厳しい商売です。

ハードオフは、中古品流通で日本最大の規模を誇るだけでなく、利益率で高い水準を実現したことが、特筆に値します。同社資料によると、同業他社の大手7社の経常利益率の平均が2.7%なのに対し、ハードオフは7.4%をあげています。

中期的には10%の利益率を出す力があると考えられます。規模の利益と効率経営で、安定的に高い利益率を出していける仕組みができていると思います。

安定的に収益を稼いできた効果で、財務内容も良好です。実質無借金で、自己資本比率は83%と高水準です。

近年、ネットに押されているとはいえ、中古品流通で有店舗販売のニーズがなくなることはありません。実物を見ないと売買できない中古品はたくさんあるからです。有店舗で安定的に稼ぐビジネスモデルを完成したことで、社会的になくてはならないインフラを支配する企業になったと言っていいと思います。

成長戦略を担う“2つの柱”

ハードオフ自身も、ネット流通業の隆盛を、指をくわえて見ているわけではありません。今、ネットとリアルの二刀流で稼ぐモデルを作るべく、ネット販売の拡大に向けて積極的に投資をしているところです。

同社の運営する「ネットモール」の売上高は、2018年3月期にやっと10億9,000万円に達したところですが、ネットモール訪問者は886万人に拡大しています。中古楽器など、ネットでの購入ニーズが高い商品も出てきており、今後の展開が楽しみです。


ハードオフのネット戦略を担う「ネットモール」

成長が期待されるもう1つの柱は、海外事業です。米国、中国、台湾、カンボジアなどで事業を展開しています。

米国では、個人の間で中古品を「ガレージセール」と称して売買する習慣が定着しています。ただ、個人間で売買するのは効率が悪いので、ハードオフが進出して、個人から中古品を買い取ったり売ったりするのは、素直に歓迎されています。

カンボジアに出店するのも、意味があります。日本で売れずに残ったものでも、カンボジアで飛ぶように売れることがあり、グループ全体での流通効率を上げる効果が見込めます。中国、台湾を含め、今後は海外がハードオフにとって成長市場となるでしょう。

割安株投資の重要ポイント

結論として、私はハードオフがネットに侵食される衰退企業とは考えていません。中古品物流というインフラを押さえて安定収益を上げつつ、ネットと海外で少しずつ成長していくと見ています。

ただし、株式市場がハードオフを評価するまでには、かなり長い年月が必要でしょう。ハードオフの成長戦略が実を結び、再び最高益を更新するまでに、まだかなり時間がかかりそうだからです。割安株投資とは、じっくり長期に寝かせて、成果を待つ戦略です。

予想配当利回りが5月31日時点で3.7%と高いので、長期投資しやすいと思います。長い年月にわたって株価が低迷する可能性もありますが、それでも、私がもし今もファンドマネージャーならば、ハードオフを少し買ってみたいと思うところです。

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