はじめに

先週は日経平均株価が大きく下げました。市場が過度に悲観的になる不安定な局面では、企業の本来的価値に対して株価が過小評価され、割安に放置される場面が多いといわれています。

相場変動の大きい局面では、流動性の低い中小型株は株価のボラティリティー(株価変動)が大きく危険だとの見方もあります。

しかしこれまで、中小型株は市場環境のさまざまの場面を乗り越え、大型株を上回るパフォーマンスを上げてきました。今回は、中小型株投資の有効性について考えてみましょう。


中小型株ってどんな株?

東証規模別株価指数には大型株、中型株、小型株の3区分があります。これは東証第1部上場の約2,080銘柄を、時価総額と流動性に応じて3つの規模別に分け、それぞれの株価指数を算出したものです。

東証規模別株価指数

大型株時価総額と流動性が高い上位100銘柄
中型株時価総額と流動性が高い上位400銘柄
小型株大型・中型に含まれない全銘柄

大型株、中型株、小型株について2001年以降の株価指数の推移をみてみましょう。中長期的に大型株のパフォーマンスを中型株、小型株が上回っていることがわかります(下図)。

株価指数の上昇・下落の期間別騰落率を見たのが、以下の4つのグラフです。

(1)の上昇局面では中型株と小型株の上昇率が大型株を上回り、(2)の下落局面では中型株と小型株の下落率は大型株並に抑えられています。また、(3)の上昇局面でも中型株・小型株のパフォーマンスが大型株より優れ、(4)の下落局面では中型株と小型株の下落率は、大型株よりも小さい結果となっています。

中小型株は、短期的には大きな株価変動が見られる場合もありますが、中長期的には上昇・下落のいずれの局面でも相対的に中小型株のパフォーマンスが優れているといえそうです。

今後の株式市場の見通しは?

先週の株式市場は、イタリアやスペインの政治的混乱を背景に、欧米株が大きく下落した流れが日本株にも波及しました。今週に入り持ち直しの気配がありますが、5月30日には下げ幅が一時400円を超え、4月18日以来、約1カ月半ぶりに2万2,000円を割り込みました。

トランプ米政権による関税発動の発表により、カナダやメキシコ、欧州連合(EU)との緊張が懸念要因ですが、6月1日に発表された5月の米雇用統計を好感した米株高の流れが日本株に好影響を与えそうです。

最近は、トルコやアルゼンチンなどの新興国の通貨安などから新興国景気を不安視する見方もあるようですが、世界景気が後退している兆しは今の所みられません。国際通貨基金(IMF)によれば、世界経済は2018年、2019年ともに、3.9%成長の見通しです。

国内景気にも大きな問題が生じているようには思われません。

2018年1~3月期実質国内総生産(GDP)速報値は、輸出の伸び悩みや天候不順の影響により、前期比年率で▲0.6%と9四半期ぶりのマイナスとなりました。が、4月の景気ウォッチャー調査では、先行き判断が上向きに転じるなど、この先は一時的な停滞から抜け出すことが予想されます。

12日に予定されている米朝首脳会談や6月の米連邦公開市場委員会(FOMC)を控え、相場変動の大きい展開が続く可能性があります。

それでも、国内企業の2019年3月期の会社側による業績計画は当初の見方ほどの悪化がみられないなど、日本株の上昇トレンドが崩れることはなさそうです。

中小型株で資産形成も一つの投資方法ではないでしょうか。

(文:いちよし証券 投資情報部 大塚俊一)

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