「スーツに見える作業着」としてネット上で話題となり、ファッション通販サイト「ロコンド」でも4月の月間売り上げ1位に輝いた「ワークウェアスーツ」。その夏服バージョンが7月に発売されます。

「機能性は変わらず、より涼しく、より軽く」(販売元のオアシススタイルウェアの中村有沙代表)というキーワードで開発が進められた、一連のラインナップ。大ヒットを記録した既存商品から、どこがどう進化したのでしょうか。


ジャケット、パンツ、ビズポロで展開

ワークウェアスーツの夏コレクションは、ジャケット、パンツ、ビズポロ(半袖・長袖)という4種類の展開。中でも基幹商品に位置付けられているのが、半袖のビズポロです。

大きな特徴は、ファスナー付きのポケット。携帯電話も入る大きめのサイズで、ファスナーを閉めておけば、かがんだ時にも中に入れたものが落ちません。また、従来品とファスナーの開閉方向を真逆にし、首から下げたIDカードホルダーを収納しやすくしました。

襟の高さにも工夫をこらしました。ジャケットを羽織った時でも正装に見えるよう、一般的なポロシャツよりも襟の高いデザインにしました。また、ネクタイを締めてもデザインとして成立するよう、配慮したといいます。

裾丈にもこだわりました。前面はジャケットを羽織ってもだらしなくない着丈、かつ、後ろ側はかがんでもポロシャツの下の背中が見えない程度の長さに調整しています。


夏コレクションについて説明する、オアシスライフスタイルグループの関谷代表(右)とオアシススタイルウェアの中村代表

そのうえで、ワークウェアスーツの最大の特徴である、撥水性、速乾性といった機能面は踏襲。親会社のオアシスライフスタイルグループの本業である水道工事の作業員にも着てもらい、何度も試験を重ねたそうです。

一方、ジャケットは裏地をすべてなくして通気性を高めるとともに、従来品の2分の1にまで軽量化。従来品で好評だったファスナーポケットやペン差しは残し、毎日洗えて、部屋干しでも3時間以内で乾くという速乾性はキープしました。

パンツは9分丈で、少しくるぶしが見えるくらいの長さになっています。大腿部には折り畳み傘も入れられる大サイズのジッパーポケットを配置。既存商品は裾を絞ったデザインですが、夏コレクションではストレートに見直し、シルエットをすっきりさせました。

要望を受け急ピッチで開発

もともと水道工事業の作業服のリニューアル計画から誕生した、スーツ作業着。現在では、山形県の農家や全国展開のマンション管理会社の制服など法人顧客にも採用されていますが、それでも購入者の7割が個人です。

購入者の大半を占める個人の中でも、自転車で通勤している人や、飛行機に長時間乗る機会の多い人に重宝されているといいます。こうしたヘビーユーザーから寄せられた意見が、夏コレクション開発のきっかけとなりました。

気温が30度近くまで上昇する日が多かった、今年のゴールデンウィーク前後。この頃から、「半袖シャツを作ってほしい」「もっと軽くて涼しいものはないのか」「足首が見える涼しいパンツはない?」といった意見が寄せられるようになったそうです。

こうした要望に応える形で、開発をスタート。一般的なアパレル企業であれば、とうの昔に商品を発表している時期でしたが、オアシスの場合、もともとが水道工事業だったため、要望を受けてから急ピッチで企画を詰め、ようやく7月の発売にこぎ着けた格好です。

年内に海外進出、冬服も開発中

着々とラインナップが拡充されている、ワークウェアスーツ。現在はネイビーとブラックの2色展開ですが、他の色合いも開発中です。さらに、中綿の入った防寒具など、冬用のラインナップも開発を進めているそうです。

オアシスライフスタイルグループの関谷有三代表が掲げる野望は、さらに壮大です。今後はデザイナーも採用して、機能性と同時にファッション性を高めていくといいます。

「今ではデニムパンツが誰も作業着だと思っていないのと同様に、作業着から生まれたワークウェアスーツも、スーツでもカジュアルウェアでもない、第3の選択肢として市民権をもらえるとうれしいです」(関谷代表)

今年のうちに海外展開も始まる予定で、台湾では百貨店で一般向けに販売、中国では現地の板金工場の制服として採用されるそうです。国内でも漁業組合から問い合わせが来ており、近い将来、スーツ姿で魚を釣る漁師さんが現れるかもしれません。

初年度の目標は年商1億円。しかし、滑り出しは当初の想定を大きく上回る好調ぶり。「この売れ行きだと、初年度目標は簡単に突破できそうですね」と水を向けると、関谷代表は思わずほほを緩めます。

目下のところ、中国での生産ラインを増やして、増産体制の構築を進めているところ。スーツに見える作業着の快進撃は、まだまだ続いていきそうです。

(文:編集部 猪澤顕明)