はじめに
今でも予防接種体制で遅れ気味
1978年の定期接種導入後、患者数は減ったものの、接種率が不十分だったために、流行は続きました。
たとえば、南北アメリカ大陸では2000年に麻疹排除を達成しましたが 、日本では2001年に28万人以上の流行が、2008年(わずか10年前です)には1万人を超える流行がおきており、日本からの渡航者が、麻疹排除国で発症してしまうケースもありました。
その後、日本でも予防接種の勧奨を強化し、2015年に、ようやく麻疹排除国であることがWHOに認定されました。
麻疹以外のワクチンについても、2013年には予防接種制度が見直され、WHOが定期接種を推奨するほとんどのワクチンをカバーしたことにより、ワクチンギャップは解消の方向にあります。
しかし、日本には異なる病原体に対するワクチンが1本の注射となった混合ワクチンの種類が少ないことから、現在でも諸外国と比べて体制整備の遅れを指摘されることがあります。
ワクチン1回世代はどうすればいいの?
最近の麻疹流行では、患者の年齢が話題になることが多くあります。
2006年の2回接種導入前の世代の一部は、中高生時代に2回目の接種の機会が設けられましたが、現在の28歳から45歳頃の多くが1回しか受けていません。
1回の接種では、年数を経ることで免疫が減衰してしまうことが知られています。まだ、麻疹患者が多かったころは、自然感染によって、1回しか接種していなくても免疫が強化されることが期待できたのですが、患者が減少し、自然感染の機会が減ったことで、免疫力が弱まっている可能性があるのです。
一方、45歳以上は、定期接種導入前の世代ですが、予防接種を受けていなくても、子どもの頃から何度も流行を体験したことで、免疫を持っている人が多いと言われています。
国立感染症研究所の「感染症発生動向調査(2018年5月30日)」によると、2018年1月以降の患者年齢は、20~30代が57.3%と他年代より多くなっています。2009年では、およそ半数が10歳未満で、20~30代が25.3%だったことから、予防接種によって相対的に子どもの感染が減り、成人の感染が増えていることがわかります。
図3年齢群別麻しん報告数(2018年、全体164人)
現在、定期接種は、生後12~24か月と小学校就学前1年間です。お子さんが対応時期になったら、早めに確実に受けることが大切です。
また、ワクチン1回世代は、ちょうど出産年齢と重なります。この予防接種は、妊娠中の女性は受けることができません。
したがって、妊娠を考えている人は、一度、母子手帳等で自分の接種歴を調べたり、抗体検査を受け、必要ならば予防接種を受けることを検討してはどうでしょうか。
また、麻疹は潜伏期間が比較的長いため、知らないうちに周囲にうつしてしまうことがあります。特に、乳児や妊婦と接する可能性がある人は、十分な対策を行うことが大切です。