はじめに

企業における女性登用への注目度が高まっています。背景には、いくつかの要因が考えられます。

ESG(環境・社会・ガバナンス)投資の広がりや、企業統治(コーポレートガバナンス)改革によって人材の多様性が求められるようになってきたこと。さらには、政府が推し進める女性活躍推進施策や、企業がコーポレートガバナンス報告書や統合報告書などで積極的な情報開示をしていることなどが挙げられます。

一般的に大企業のほうが女性の登用率が高いといわれていますが、中小型企業ではどうなのでしょうか。今回は、中小型企業の女性活躍推進の状況と、業績・株価パフォーマンスの関係を観測しました。


女性役員が多いのはどんな企業か

日本の上場企業(データがとれる3,606社)のうち、女性役員を有する企業は全体の32%となる1,159社です。この割合は、東証1部上場企業では38%(大型企業72%、中型企業51%、小型企業32%)、同2部上場企業では22%、JASDAQ上場企業では24%、マザーズ上場企業では36%となっています(下図)。

やはり、企業の規模が大きいほど女性役員がいる割合は高いようです、また、上場10年未満の企業の38%が女性役員を有しており、上場年数の浅い企業でもその割合がやや高くなる傾向がみられます。

女性役員ゼロと1人の間に“壁”

女性役員を有する企業はそうでない企業に比べ、優れたパフォーマンスを上げているのでしょうか。時価総額100億円以上2,000億円未満の企業を対象に、ROE(自己資本利益率)・ROA(総資産利益率)、そして株価上昇率で比較しました。

女性役員ゼロの企業の平均ROEは6.0%ですが、1人いると7.2%、2人以上だと7.0%となりました。女性役員1人と2人以上の差はほとんどありませんが、ゼロより1人以上いるほうがROEは高くなっていることがうかがえます。(下図)。

ROAに関しても同様のことが言え、女性役員ゼロの平均ROA5.5%に対し、1人は6.5%、2人以上は6.4%となっています。

女性役員2人以上が高パフォーマンス

次に、株価上昇率はどうでしょうか。女性役員ゼロと1人の差はほとんどありませんが、2人以上の会社の株価パフォーマンスは他2グループに比べてよいことがわかります(下図)。

女性役員数とパフォーマンスの因果関係は必ずしも明確ではありませんが、業績や株価に対する意識が高い企業が女性を積極的に登用する傾向があるといえるのかもしれません。中小型企業に関しては、女性役員がいたほうがパフォーマンスがよいといえそうです。

下表にいちよし経済研究所がフォローする約530社の中から、中小型企業で女性役員比率が高い会社をリストアップしました。

ここに挙げた企業の多くが人材の多様性を強みに持続的成長を実現していくことが期待できそうです。

(文:いちよし経済研究所 企業調査部 嘉山美樹子)

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