はじめに

読者のみなさんからいただいた家計や保険、ローンなど、お金の悩みにプロのファイナンシャルプランナーが答えるFPの家計相談シリーズ。今回は内藤忍氏がお答えします。

1棟買いのアパート経営に興味があります。セミナーに行ったところ、1棟買いすることでリスク分散ができ、収益性も高く、手持ち資金は300万円程度からと、説明を受けました。8,000万円程度で購入した後は、ひと月あたり数万円程度の黒字だと言うのですが、基本的な疑問として「ならば、なぜに一般人に販売するのか。自社でどんどん事業規模を広げればよいのでは?」という素朴な疑問にかられます。


現金で1億5,000万円程度の資金が手元にあり、株式投資または投資信託での運用を継続するか、不動産投資に乗り出すか思案しています。どういうメリット・デメリットがあるのか、ご指南いただけますでしょうか。なお、既に20年ほど前に地方で新築購入したワンルームマンションが2部屋あり、決して不動産に好印象を持っているというわけではありません。
(40代後半、既婚(子ども2人)、男性)


内藤: 不動産投資に好印象を持っているわけではないということで、慎重になっているというのはよく理解できます。不動産投資はリターンが望める反面、空室リスクもあり、戦略なしに乗り出すのは危険です。

不動産販売会社は、ビジネスモデルが手数料収入に依存しており、自らに資産を保有するほどの資金力や借入能力がなければ、物件販売に特化するのは自然です。自社でやらないのは資本面での制約があるからです。

1棟買いの不動産投資は投資上級者向け?

ご質問者の方の場合、資金力は問題ありませんから、あとは収益性とリスクを考えて投資判断をしていくことになります。個人的には1棟買いの不動産投資は、中・上級者向けの方法であり、初心者やこれから本格的に始める人には向いていないと考えます。

なぜなら、物件のリスクが1カ所に集中し、失敗した時のダメージが大きいからです。きちんと目利きができてエリア選択ができる人であれば、効率的に資産を持つことができるという利点がありますが、物件を分散して始める方がリスクをコントロールできます。

一般の投資家にはなかなか回らない情報

不動産と金融資産の大きな違いは「市場の効率性」です。金融マーケットは効率性が高く、自分で銘柄選択やタイミングを考えても、インデックスに勝つことが難しいマーケットといえます。

不動産は物件の選択の巧拙によって運用成果に大きな差がつきます。1棟の賃貸物件で投資利回りの高い物件は、特定の大口投資家に情報が集まり、一般の投資家にはなかなか回ってきません。初心者でそのような情報ソースを持たない人は、ワンルームマンションのような堅実な物件から始めるのがよいと考えます。

管理会社が管理をすべて行ってくれ、空室率の低いエリアの物件をリーズナブルな価格で購入すれば、掘り出し物が見つからなくても、大きな失敗はしにくくなります。

まずはワンルーム投資で経験を積んで

ある程度経験を積んでから、1棟買いの不動産投資を検討しても遅くはありません。流動性のあるワンルームマンションであれば売却も容易ですから、物件の入れ替えもそれほど苦労しないでできるはずです。

なお、日本においては新築の物件価格は中古に比べ割高で、利回りからみると不利になることが多いです。耐用年数を考えれば、RC(鉄筋コンクリート)の中古物件を中心に投資するのがよいと思います。

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