「やあ、待ってたよ」。セブン‐イレブンの店舗でよく見慣れた銀行のATMにキャッシュカードを挿入すると、こんなイケメンボイスが流れてきました。

しばらく呆然として見つめていると、ATMはさらに語りかけてきます。「今日は何する?」。不意を突かれたATMの反応に、ついつい挙動がぎこちなくなってしまいます。

実はこれ、セブン銀行が8月から都内数ヵ所に設置する予定の「セブンコンシェルジュ」搭載ATMのテスト機なんです。イケメンの声が流れるATMを開発したセブン銀行の狙いは、どこにあるのでしょうか。


人気声優の声で操作をサポート

セブンコンシェルジュ搭載のATM。一見すると通常のセブン銀行のATMと同じなのですが、2つある画面の中を覗くと、少し様子が違います。上部にあるセカンド画面にはキャラクター紹介の静止画が流れ、ATMを操作する下部のメイン画面も背景がキャラクター仕様になっています。

セブンコンシェルジュでは7人のイケメンキャラクターが登場し、ATM1台につき1人のキャラクターが設定されています。利用者がATMを操作するたびに、イケメンボイスでサポートしてくれる仕組みです。

7人のキャラクターの声を演じるのは、前野智昭さんや小野友樹さんら、豪華な声優陣。中には、ツイッターのフォロワー数が100万を超える人気声優もいるそうです。

ATMは8月から、アニメ好きが集まる都内の数ヵ所に設置される予定。コンシェルジュ搭載だからといって、余分に手数料を取られることはありません。

10代後半から20代前半の女性に照準

それにしても、セブン銀行はなぜこんなにエッジの立ったATMを開発したのでしょうか。銀行業界ではこれまでもキャラクターデザインのキャッシュカードや通帳はありましたが、
同行は以前から「もう少し踏み込んだ企画ができないか」と考えていたといいます。

セブンコンシェルジュ誕生の直接のきっかけとなったのは、今からちょうど1年ほど前にスタートアップ支援会社のcrewwが開催したマッチングイベント。この場で、イラスト制作などのクラウドソーシングを手掛けるフーモアから提案された企画が原型となりました。

最初はATM以外にも、ゲームなどさまざまな案が出たといいます。半年をかけて議論した結果、現在の事業モデルにたどり着きました。ターゲットに据えたのは、10代後半から20代前半の若い女性でした。

突き詰めてしまうと、若い女性の利用者にとって銀行口座はどの銀行で開設しても大差がないのが現状です。実際にセブン銀行がヒアリング調査をしても、「バイト先で作るように言われたから」「小さい頃に親が作ってくれた口座をそのまま使っている」という理由が多かったといいます。

もう少し銀行口座に愛着を持ってもらいたい。そのためには、銀行口座に強烈な付加価値を付ければいいのではないか。セブンコンシェルジュの根幹には、そんな考えがありました。

キャラ設定を徹底的に作り込み

とはいえ、フーモアの提案を採択したセブン・ラボ(セブン銀行内で新規事業の立ち上げを担当する部署)に所属する社員はオジサンばかり。若い女性をターゲットにした施策はやったことがないし、SNSを活用したプロジェクトのノウハウもありませんでした。

そこで企画の立ち上げ当初から、アニメに造詣の深いと社内でも評判の高かった女性社員3人に声をかけ、プロジェクトに参画してもらいました。社内メンバーがセブン・ラボをサポートするのは、今回が初めての取り組みだったそうです。

キャラクターの作り込みは、3人の女性社員を中心に進んでいきました。最初は12人のキャラクターを作ろうとしていましたが、さすがに多すぎるということで、セブンにちなんで7人に集約。こういう設定だと萌えるという要素を付箋に書き出し、キャラクターを作っていきました。

キャラ設定に費やしたのは2~3ヵ月。別に本来業務を抱えながら、毎回3時間以上、話し込んだといいます。そこからフーモアにラフ画を描いてもらい、設定とデザインが決まりました。

年齢や職業、血液型だけでなく、生い立ちや話し方、細かいエピソードなど、裏設定も作り込まれているそう。今後、ツイッターなどで小出しに発信していく予定です。