はじめに

空白地帯の顧客層を開拓

ここまで徹底的に作り込んだ背景には、セブン銀行が置かれた独自の事情があります。

同行のATM利用者は、基本的にセブン‐イレブンの利用者層とほぼ同じ。30~40代の男性がボリュームゾーンで、若年女性はあまりメインとして使っていないといいます。イケメンボイスで空白地帯の顧客層を開拓できる今回の企画は、まさに打ってつけでした。

その一方で、こうした動きをセブン銀行の中だけにとどめるのではなく、他の銀行にも広げていって、ATMを使ってもらうという狙いも存在しています。

というのも、セブン銀行は提携金融機関からのATM手数料が収益の9割を占めるという独特のビジネスモデルを展開しています。ATMにイケメンボイスという付加価値を加えることで、セブン銀行のATMを使いたいという銀行が増えれば、収益の拡大が見込めます。

銀行でありながらATM運営を主力にしているのは、世界的に見ても同行だけだといいます。その意味でも、セブンコンシェルジュはセブン銀行ならではの取り組みといえます。

コミケやスマートスピーカーにも展開

企画のWebサイトがオープンしたのは6月25日。これまでの反響は、当初の想定を上回っているそうです。

フォロワー数はサイトオープン初日に900を突破し、2日目には1,500に達しました。口座を開設したというつぶやきの他に、セブン銀行の口座をすでに持っていたけれど、これを機にもっと使おうというツイートもあったといいます。休眠顧客の掘り起こしにも一定の効果が上がっています。

セブンコンシェルジュの展開は、ATMだけにとどまりません。

8月には、「コミケ」の愛称で知られるコミックマーケットにも企業ブースを出展する予定です。テスト機を1台設置して体験型ブースとするほか、出演声優によるトークイベントや、執事服を着たコスプレーヤーによるブース案内も実施。キャンペーンに参加するとノベルティグッズをプレゼントする企画も開催します。


「セブンコンシェルジュ」に登場する7人のキャラクター 

さらに、近日中にはスマートスピーカーへの展開も予定しています。単純な残高照会ではなく、イケメンボイスで「今日は給料日だったんだね」などと語りかけてくる仕掛けです。

「既存のキャラクタービジネスでは利用者を課金ゲームに取り込む動きが多いですが、われわれは銀行なので、貯金をサポートするような機能を出していきたい」(セブン・ラボの長沢淳博次長)。一定金額が貯まるとイケメンボイスで褒めてくれるなど、預金額に応じてセリフが変わる仕組みも取り入れる予定です。

セブンコンシェルジュに登場する7人のキャラクターは、その中の1人が経営するカフェに集まる顔見知りという設定。これにちなんで「カフェのリアル店舗もやってみたいです」と、キャラクター作りに参画した業務推進部の吉田南・副調査役は目を輝かせます。

セブン・ラボの長沢次長は「いただいたお客様の声を集めて、検証・深掘りすることで、他行との協業につなげていきたい」と意気込みます。銀行らしからぬ意欲的な挑戦は、周辺環境の変化に揺れる銀行業界にとって1つのヒントとなるでしょうか。