はじめに
シュリンクフレーションの株価への影響
上記のように容量を少なくして事実上値上げすることは、最近では英語のshrink(縮む)から「シュリンクフレーション」と呼ぶこともあるようです。このコーナーはMarket Plusという名前ですから、シュリンクフレーションが相場にどのような影響を与えるのか見てみましょう。
食品関連の銘柄では、山崎製パンが今年3月、原材料である小麦粉や乳製品、油脂などの価格上昇、物流コストや人件費の増加、カリフォルニアレーズンの収穫量が過去にない低水準となったことなどを理由に、5月1日出荷分から「芳醇レーズンロール」など3品目を値段据え置きのまま、内容量を減らすことを発表しました。
また、森永乳業は今年4月、酪農生産者や乳牛の飼養頭数の減少により生乳生産量の減少傾向が続いていることから、同様に5月1日出荷分から「クラフト細切りチーズ」など3品目を値段据え置きのまま、内容量を減らすと公表しました。
両社の株価推移を見ると、山崎製パンは値上げ発表の3月から株価を上げ、一方で森永乳業は値上げ発表の4月から株価を下げています。つまり、シュリンクフレーションが株価を動かす要因にはなることは間違いない半面、好感されるか、はたまたネガティブにとらえられるかは、その企業によってバラバラなようです。
前述の山崎製パンの場合は、ステルス値上げによって採算性が向上するのではないかと、素直に評価された形です。一方、森永乳業は値上げ発表後に自社サイトでの情報漏洩などもあり、株価は軟調な動きとなっています。
どんな値上げ企業の株価が上がる?
現時点では上場企業におけるシュリンクフレーションの例がそれほど多くないので、裾野を広げて、本来の意味での値上げをした企業の株価の動きも見てみましょう。
基本的には、値上げは「採算性の向上」や「値上げできるほどブランド力がある」と前向きにとらえられるケースも多いようですが、その企業に競争力がない場合などは「値上げ=顧客離れ」と考えられ、株価が軟調になるケースが散見されます。
たとえば外食産業では、昨年値上げに踏み切った「すき家」を運営するゼンショーホールディングスの株価は年初から株価を上げ続けていますが、同じく昨年に値上げを断行した鳥貴族は年初から株価を下げています。
牛丼チェーンの場合、日本国内では大手3社による寡占状態にあります。そのため、牛丼の値上げをしても、セットの種類や、追加可能なトッピングを工夫することで、顧客を逃がさないことも可能です。
対して、居酒屋チェーンの場合、鳥貴族と似たようなコンセプトの店が大量にあります。それゆえ、値上げがそのまま顧客離れにつながりやすいと投資家が受け止めたと推察できます。
今後は値上げを発表しそうな企業の株式に投資する際は、このような過去の事例を研究し、シュリンクフレーションがその銘柄の株価にどう影響するかを想定して動く必要があると思います。
(文:Finatextグループ アジア事業担当 森永康平)