はじめに
ゆうちょ銀行の狙いはファミマATMの置き換え
さて、実はこのファミマATMには第二弾が用意されている。現在、ファミマの店内にはファミマが10%出資するイーネットのATMが置かれているのだが、これをゆうちょ銀行のATMに切り替える動きがあるのだ。
今年4月に提携を発表した段階で日本郵政の長門社長がファミマの店舗に導入するATMについて「すでに3,500台を発注した」と発表していたが、ここがひっくり返されるとファミマのATMを収益基盤にするイーネット社が存続の危機になる。
そこでファミマと一緒にイーネットに出資をしているメガバンクや地方銀行がこの計画に難色を示し、このATM置き換え計画は暗礁に乗り上げているというのだ。
そのためにまずイーネットのATM利用料を無料にすることにし、そのコストはゆうちょ銀行が負担することから外堀を埋めることにした模様だ。
いったん負担を受け入れることでファミマとの提携を先に進めれば、将来的には元の計画通りにゆうちょ銀はファミマのATMスペースを手にいれることができるように交渉条件が変わってくる。手数料無料化はゆうちょ銀行にとっても悪いスタートではないようだ。
次の戦いは宅配分野の大変動
さて、日本郵政グループとファミマはATMだけでなく「広範囲に提携を進める」ことを明言している。それが示すところは明確で、ファミマは近い将来、宅配便などの物流の取り扱いをヤマト運輸から日本郵政に切り替えることになるだろう。
日本郵政とコンビニといえばこれまでローソンの独壇場だった。ローソンでは宅配便といえば「ゆうパック」の取り扱いがメインで、店頭レジ横には小さな郵便ポストが設置されて郵便が差し出せるようになっていた。
これと同じ、そしてそこから一歩進んだ取り組みにファミマの郵便・宅配サービスが変わる可能性が高い。ローソン同様にこれまで扱ってきた宅急便を取りやめて宅配便はゆうパックに切り替わり、ファミマのレジ横にも郵便ポストが設置されるだろう。
さらに日本郵政の計画としては宅配ポストもファミマに設置する方針だという。宅配ポストは新築のマンションにはすでに広く普及しているが、古いマンションや一般家庭の住民には何度も再配達をしなければ商品を届けることができない。
これが郵便局のコスト負担を引き上げている現状がある。もし宅配ポストがファミマの全国店舗18,000か所に設置できれば、ゆうパックの配送コストを大きく引き下げることができるようになるだろう。
このように、今回発表された提携第一弾の先を読むと、ファミマにとってはセブンイレブン追撃の大きな武器として高齢者層集客のカギを日本郵政グループから手に入れたことがわかる。
一方、日本郵政グループはコンビニATMの拡大とファミマで受け入れる宅配便収入、そして宅配ポストによるコストダウンなどのメリットを手に入れることができるようになる。双方に大きなメリットが生まれる形で今回の提携劇がこのまま進んでいくのか?注目されるところである。